70代の家づくりのヒント

主屋との距離感

70代の家づくりのヒント

今回、父親の住まいを設計した建築家の岡本一真さんに、
老後の家づくりで心がけたいことをうかがった。
建築家としてバリアフリーを意識するのはもちろん、
家族としていつも身近に接しているからこそ気がつくポイントも。
これから家づくりを考えているシニアの方や、
それを見守りサポートする側の家族もぜひ知っておきたい。

主屋との距離感

息子家族と即かず離れずの距離感は、岡本さん曰く「スープの冷めない距離」。具体的には徒歩5分くらいを表す。主屋で一緒に食事を摂ることも多いため、移動にも苦労しない適度な距離感が大切。庭を面して隣り合う暮らしは安心感があり、庭の四季折々の景色が心を癒してくれる。

手すり

手すり

これ見よがしにではなく意匠的に。握りやすさも考えられた八角形をモチーフに、なるべく安全に暮らせるよう配慮した。「まだ必要ないけれど、将来役に立つだろう。うまくつくってくれたと思います」と、岡本さんも感心の出来。

段差のない間取り

高齢期を迎えると、視界が狭くなる視野狭きょう窄さくや、糖尿病の影響などで足が運びにくくなってくる。また、床の素材や模様が違うと段差に見えてしまうこともあるので、なるべく素材を揃えてアプローチから段差がないようにつくるのが基本中の基本。玄関から奥の部屋まで一直線に導かれた動線に
沿って、壁際に手すりを取り付けた。

水まわりと物干し

一人暮らしということもあり、トイレと水まわりが一体になった間取り。車椅子でも使いやすい広さを意識した。万が一汚してしまったときのために、床は耐水性のあるコルク材を使用。屈みやすいように便座の付近に手すりを取り付けた。ちょっとした支えになればと風呂場のほうにも延ばした手すりは、つい握りたくなる心地よさ。吊り下げ式の物干し竿は、高窓からの光を浴びて洗濯物もすぐに乾く。浴室の前には、収納に便利な棚を取り付けた。

温度差をなくす

各部屋の温度差をなくすために、床下に設置したエアコンで空調をまかなう。冬は床と壁の隙間に設けた吸排気口(右写真)から暖気を、夏は天井の吸排気口(左写真)から冷気を送る。部屋ごとではなく建物全体の温度を均一にするのがポイント。

チルチンびと 107号掲載

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