Jターンした夫妻の美意識をかたちにした匠の技
Jターンした夫妻の美意識を
かたちにした匠の技
名古屋近郊に勤務する服部さん夫妻にとって
新居の候補地は岐阜・三重・愛知の選択肢があった。
「これからどうやって暮らそうか考えた時、自然豊かなところがいいなと思いました」。
三重県松阪市出身の夫妻は、住んでいた名古屋市内から
Jターン移住し三重県桑名市多度町にやって来た。
三重県桑名市 注文住宅 トヤオ工務店 服部邸
設計・施工=㈲トヤオ工務店 写真=酒谷 薫
敷地の裏の多度大社は16、17歳の青年騎手が武者姿で乗馬し高い崖を駆けあがるという活気のいい神事がある。「服部さんの長男も大きくなったらあがるのかな」と、服部邸を手がけたトヤオ工務店の鳥谷尾眞道社長。
トヤオ工務店は棟梁の鳥谷尾社長が創業。弟さん息子さんを含め7名の大工からなる「大工工務店」だ。
夫妻が「実家からも遠くない距離で長閑な環境」として惹かれ、行き着いたのが三重県桑名市多度町だった。この敷地は同社と付き合いのある庭師からの縁で巡りあった。「山が近いし鳥の声が聞こえるし理想に近い」とご主人。仲を取りもった鳥谷尾社長は「田舎なので近所付き合いがどうしてもあるので、服部さんに大丈夫そうかうかがいましたが、問題なさそうなお答えで」と振り返る。
三重県を拠点とするトヤオ工務店と出会ったのは『チルチンびと』から。新居への要望はとてもはっきりしていた。ご主人の関心は「構造と断熱」、奥さんは「キッチンと梁」。ご主人は無垢の木の家で断熱材は天然素材のウールブレスにしたいと考え、そのすべての要望をかなえられる同社に依頼した、と言う。服部さん夫妻は予算的にも管理の面でも「小さい家」を求めた。さらに室内は「和モダン」に。構造の梁が見えることも望んだ。「何げない会話の中で希望を汲み取ってくださり絶妙なニュアンスでうまくまとめてもらいました」(奥さん)。
自分の感覚で〝合うかたち〟を探し当てる
「掃除が嫌いだから」と潔く言う奥さん。水と油が混ざると、汚れがこびりついてしまう。それならばシンクとガス台を左右にくっきりと分け、「旅客機のコックピット」のようなコの字型のキッチンにしたいと注文した。トヤオ工務店はその要望に自社のオリジナルキッチンで応えた。シンクとガス台の境界は無垢板で作業台兼配膳スペースにした。キッチンに立つとリビング・ダイニングの全体を見渡しつつ、サイドに付けたカウンターの目隠しで調理に集中できる。
ほかにも備え付けの引き出しは最小限にし「ものに合わせた道具入れ」を考えたいと収納をオープン式にした。生後5か月の長女がいる今の暮らしも将来は変わっていく。その時々の暮らしに合った使い勝手を探り当てたいと考える奥さんに「こんな風なのは使えそう?」と鳥谷尾社長がていねいに提案し、決めていった。
キッチン以外にも奥さんの独自のかたちがある。それは「和室の押入は襖を入れずに収納すること」や、埃を寄せ付けないよう「カーテンを付けないで済む家であること」だ。住宅正面にあたる南側はあえて壁にし、採光に工夫した。すっきりとした大壁に野趣溢れる根曲がりの太鼓梁が3本架かる。モダンな梁に似合う天窓から室内に爽やかな光が注いでいた。
「この梁、すごく気に入っているんです」と奥さん。梁は「材木屋にこんなむくり加減のものをと伝えて、用意してもらいました」と鳥谷尾社長。自分の感覚を追求し、かたちづくろうとする建主、その思いを職人が技で応える住まいのかたちに感動を覚えた。
所在地 | 三重県桑名市 |
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家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
面積 | 敷地 343.01㎡ 延床 151.04㎡ |
竣工 | 2019年7月(工期2018年11月~2019年7月) |
設計・施工 | ㈲トヤオ工務店(設計:鳥谷尾眞道 大工棟梁:石川翔悟) |
構造形式 | 木造軸組工法 |
主な外部仕上げ | 屋根=ガルバリウム鋼板縦葺き 外壁=杉板12㎜ ノンロット2回塗り 軒天井=ガルバリウム鋼板 |
主な内部仕上げ | 天井=杉 羽目板・ホタテ塗り 壁=和紙クロス・ホタテ塗り 床=杉板厚30㎜下地 杉無垢板厚15㎜素地仕上げ |
有限会社 トヤオ工務店
〒511-0274 三重県いなべ市大安町大井田1331-1
家づくりにおける地元自然素材(木・土・紙等)をすべて”地産地消”する事を推進しています。
自分たちにできる限りの力を注ぎ、伝統技術の担い手育成や、
地元自然素材の仕入れ開拓など手間暇を惜しまず、日々家づくりと向き合っています。
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