土間床

モルタルと自然石で意匠され た軒下の土間。(常滑)

土間床

文・写真=小林澄夫

木造住宅の土間は、はじめはその土地の地場の粘土を叩きしめただけであったが、土だけのタタキは湿気を帯びやすくまた乾くと崩れ粉になりやすく、土に石灰と苦汁を入れて叩き仕上げるようになった。その土地土地で三和土にふさわしい土があって、三河などでは風化花崗岩のサバ土、京都では深草の深草砂利、一般的には真土(マサ土)が三和土に使用された。京都など茶室の土間の深草三和土には、一二三石といって特徴のある小石を、一ツ二ツ三ツと埋めこんだ意匠として土間に風情を与えている。

土間がセメントモルタルになってからは、モルタル土間の仕上げとして、五色砂利とか見た目に美しい砂利を混ぜたモルタルを塗りつけ、洗い出し仕上げをした。また手のこんだところでは、みかげ砕石によるみかげ研ぎ出しなどもおこなわれた。

大地を威圧するようなコンクリートモルタルの土間ではなく、かつての木造住宅の縁先の犬走りの軒先の雨落ちの下に並べられた河原石の間の土の三和土土間、石と石との隙間にすみれや日照り草の花が咲く、そんな自然の土の土間が懐かしいものである。

昔は土間を通じて家の内部と外部はつながっていた。
土間は人を迎え、送る場といってよく、
玄関土間にあれ、軒下の犬走りの土間にあれ、
土間がその家の歓待の心を表していたといってよい。

チルチンびと 別冊66号掲載

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

Optionally add an image (JPEG only)