リフォームで薪ストーブ

リフォームで薪ストーブ

リフォームで薪ストーブ

薪ストーブを安全に長く楽しむための注意点は主に三つ。
煙突の設置位置と方法、新たに床に加わる薪ストーブの荷重、
そして法令に適合するかどうか。
薪ストーブ屋さんに出かける前にご自身でも確かめてみましょう。

文=木下治仁 イラスト=鈴木 聡(TRON/OFFice)

薪ストーブを楽しむために
考えておきたい大切なこと

「ストーブが欲しい!」と思った時、改めて考えていただきたいことがあります。まずは設置する目的。大きくは三つ考えられます。一つは暖房のため、一つは調理のため、そしてもう一つは火を見て楽しむため。目的は一つではない場合が多いでしょうが、どれがいちばんの目的かを明確にしておくことはとても大切です。

なぜならそれによって、ストーブを設置する場所が変わってくるためです。暖房のためであれば部屋の中心に、調理が目的であればキッチンに近い場所に、火を楽しむのであれば炎がよく見える場所に置くことになるでしょう。私は薪ストーブを、家族皆が集い、楽しむための仕掛けの一つと考えます。そこで、これまで一家団欒の中心であったテレビの置き場所に、思い切ってストーブを設置することを提案します。

設置場所とあわせて、煙突の経路も重要です。煙突が部屋の上部で曲がっていたりすると、見た目によくないばかりか、煤が溜まる原因にもなります。メンテナンスもし難いですから、煙はできるだけ単純に屋外へと運びたいものです。

目的と置く場所を確認したら、ここで機種選びです。姿形だけでなく、家の断熱性能や設置場所、部屋の広さにあわせて、ストーブの大きさや熱量が適当なものを選びましょう。

最後に、見落としがちな薪の収納場所。雨のかからない軒の下や車庫など、まとまった量を保管できる場所が必要です。

ここまで検討した後に床や壁、天井の仕上げ、安全性などについて、ストーブ屋さんや施工業者さんと相談しながら決めていくことになります。ご自身でも事前に、自宅への設置が可能か、あるいは設置するには何をしなければならないかを考えておくとよいでしょう。

ゆらぐ炎を眺め、薪の燃える音やにおいを感じることでもたらされるストーブの心地よさ。それらを享受するためにも、しっかりとした下準備をしておくことはとても大切なのです。

煙突

一般的に、暖房効果や見た目、動線、使い勝手から薪ストーブの位置を決めることが多いですが、既存の住宅では、安全に煙突を出せるかどうかについても、よく検討しておく必要があります。

煙突取り付け位置

煙突取り付け位置

壁出しが可能な位置を確認する

壁出しが可能な位置を確認する

筋違の位置を確認する

目視する
筋違の位置や方向は天井裏、床下で確認しよう。構造や工法、断熱材の施工により
確認できない場合もあるが、間違いのない確認方法。

設計図で確認
平面図や軸組図でも確認できる。平面図の◁▷印が筋違の位置。柱間に1つは1本、2つはたすき掛けに2本。

外壁の下地の種類

外壁の下地の種類

煙突の種類

煙突の種類

煙突を取り付けるときのチェックポイント

煙突を取り付けるときのチェックポイント
重荷

床下を覗き、基礎の種類や構造クラックが入っていないか、土台や根太、束などの木部に腐朽や蟻害zどの影響を受けていないかなど、床下の状態が良好であることを確認しましょう。

基礎の種類と床下の確認

基礎の種類と床下の確認

床下の確認箇所
□ 基礎の結露がないか
□ 構造クラックの有無
□ 床下換気孔の位置
□ 床下の湿気の様子
□ 根太寸法と間隔
□ 床下換気孔(基礎パッキン)
□ 木部の腐朽や蟻害

布基礎の床補強

布基礎の床補強

布基礎では基本的に床が構造体に固定されていない。歩行時に床が振動しやすいため既存の床を切り取り、新たな炉台を考えよう。

ベタ基礎の床補強

ベタ基礎では床組と構造体が固定されている。下の表の条件を満たせば、既存の床上に、炉台を設置できる可能性がある。

ベタ基礎の床補強

通気層の埃対策

通気層にはハウスダストがたまりやすい。小口部分にステンレスネットを取り付けるか、通気層を掃除するためのスペースを確保しておこう。

根太寸法と炉台の種類による許容耐力目安表

根太寸法と炉台の種類による許容耐力目安表

大引:寸法90×90mm 間隔910mm

法律

建築基準法や消防法、各自治体の条例で、薪ストーブを安全に使用するための最低限の基準が定められています。ご自身で建築基準法に適合するか、確かめてみましょう。

建築基準法チェックシート

木下治仁 きした・はるひと

1975年鹿児島県生まれ。熊本大学大学院を修了後、U/ULAB、田中敏溥設計事務所を経て、2016年に木下治仁建築設計事務所設立。

チルチンびと 98号掲載

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