月に一度、nogashi trailという会を催している。の菓子の背景を五感で味わっていただきたいと、里山歩きをしながら、原材料やデザインのモチーフとなる草木を紹介する。
最初にご挨拶がてら、この谷にあるもので菓子を作るというお話をさせていただく。田んぼの畔で栽培した豆を、裏山から湧き出た山清水を使い、能登で焼かれた炭と珪藻土のかまどで茹で、風味づけに実や花を使ったり、葉で包んで蒸したりしている。
里山を歩き出す前に、最初の菓子としてtrail mixをお出しする。アメリカにいた頃キャンプや散策の時にナッツやドライフルーツなどのナチュラルなおやつで手軽につまめるものを持って出かけたので、それの「の菓子」バージョン。
今回は小さなカゴに春の息吹を感じるものを詰めた。つくしの砂糖漬け、筍の落雁、すみれの砂糖漬け、それに加えて薄焼き煎餅。
これから出かける里山で草木に興味を持っていただくきっかけになればと、季節の食べられる草花を入れて焼き上げた。たまたま木片にスリットの入ったものがあったのでスタンドとして学名と和名を書き込んで貼っておいた。
小さくてもちゃんとフキの葉
ミツバアケビのミステリアスな花は天ぷらや塩ご飯にしても美味しい
せんべい生地の上にサルトリイバラの新芽と花をのせて薄く伸ばして焼く
畑の周りに咲くカラスノエンドウはマメ科で葉の形も可愛らしい。
畑ですっかり伸びた水菜の菜の花は春の光
山桜は花と一緒に赤茶色い葉が出る、二度目の春
Trailも後半に差し掛かり、代かき前の田んぼで一休みの蓬ぜんざいを。
口直しにウコギの醤油ご飯を香ばしく焼いたお煎餅を。ほろっと苦い春の味が次の甘味へといざなう。
薄い煎餅はまるで和紙のようで、春の山を彩る草木の一瞬をとどめた「食べる標本」なのだった。