こう暑くては夏のcaféのドリンクに喉越しの良いものを出したい。集落の人々が昔から飲み続けてきた、裏山の山清水は、夏は水道水より冷たくて甘くて美味しい。餡炊きにも、使わせてもらっている。
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先日、うちの下の水汲み場に来た集落のばあちゃんが「あんた胡瓜あるけ?」「インゲンあるけ?」と聞いてきた。「あるか、ないか」を問うているというより「あげようか?」のニュアンスが強い。いや「もらってほしい」むしろ「無駄にしたく無いから、助けてというお願い」に近いかもしれない。こういうのは必ず「断らない」が鉄則で、たとえ家にあったとしても「ありがとう」といただく。とはいえ農家標準で20kgの肥料袋一杯ドーンで、嬉しいやら、途方に暮れるやら…
でも山間の200人足らずの人口の小さな集落の人が、水辺に寄って、一声掛ける、会釈をする、お裾分けがぐるぐる巡る。些細なことだけれど、山清水はそんなふうに心にも潤いを生んでいる気がする。
山清水はコーヒーを水出しにするとスッキリ甘みのある味わいになる。またゆっくり、ぽとりぽとりと雫が一滴々々落ちる様子を眺めているのも楽しいし、何より電気やガスを使わなくてもいいのもシンプルで気持ち良い。
「能登のあんみつ」のトッピングにのせている自家栽培のルバーブの甘煮、自家製のドライアプリコット。それらを作るとき副産物でシロップが出る。鮮やかなピンクのルバーブシロップとこっくりしたオレンジ色のアプリコットシロップ。
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どちらも山清水で割っても美味しいのだが、炭酸水で割ると一段と爽やかさが増す。今まで市販の炭酸水を買っていて、自家用でもペットボトルのゴミの量が気になっていた。夏はなおさらで45Lの分別ゴミの袋がいっぱいになるのが早い。
【ペットボトルの炭酸水を買う労力+ゴミを処理する手間】→【裏山の山清水の炭酸水化+ごみゼロ】はどうだろう? 最近流行りの炭酸水メーカーだけれど、家の水道水で炭酸水を作るなら、市販の炭酸水買った方が便利。エコやオシャレさだけでなく「ここにしか無い、ここだけの山清水soda」が作れるなら何だか楽しそうだ。
以前、能登半島の先端珠洲市に自給自足の暮らしを目指す知人が「家の近くに天然の炭酸水の湧く泉がある」と聞いて「羨ましいなぁ」と思ったけれど、山清水を炭酸水にできるのなら悪くないかも。
ネットでいくつか調べてaarkeのカーボネーターを購入した。HPにはシンプルなデザインや操作方法、環境への配慮などが書かれていた。
caféで目の前で汲んだ水にプシュ〜と圧を加え、「山清水soda」ができる様子を共感していただくと一期一会の特別な一杯になるような気がする。
「山清水×炭酸」という面白さのほかに、フレーバーになる素材も里山には溢れている。山に自生するオオバクロモジの枝や葉をグラスに入れ注ぐと爽やかな森のsodaの出来上がり。夏場に次々と赤く熟す、モミジイチゴ、クサイチゴ、エビガライチゴなど野生の木苺も楽しい。
猛暑だけれど、「大人の自由研究」だから昼間から「山清水モヒート」も許される。グラニュー糖と水を同量煮立てて、畑のニホンハッカをちぎって入れておくとガツンと効くミントシロップになる。柚子果汁とラム酒を加えて「山清水soda」を注ぐ。「シュワッ」と一口、ミントを「かみかみスースー」、氷「カラカラ」のあと、キリリと美味い。試したい「×有用植物」や「×季節の畑の野菜や果物」はしばらく尽きそうもない。
最後に面白いと思ったのは、カーボネーター「aarke」の由来について、「スウェーデン北部でわずか500人しか使用していない言語。南部サーミ語で「今日」という意味を指します。」とあること。
能登の集落のばあちゃん達の方言「なすびアルケ?」「白菜アルケ?」と「aarke」。「北欧」と「北陸」が私の中でシンクロした。今度ばあちゃんが水汲みに来たら、野菜のお礼に「山清水soda」をご馳走しよう。