建主とつくる最小限の住まい
建主とつくる
最小限の住まい
テレビなし、エアコンなし。インターネットも、冷蔵庫すらなし。
山小屋のような家で暮らすTさん夫妻がめざすのは〝原始人の暮らし〟。
型破りな建主と、信念を貫き通す工務店がつくる独創的な住まいを紹介する。
埼玉県 注文住宅 千葉工務店 T邸
設計・施工=㈱千葉工務店 写真=米谷 享
「精神的に豊かで、人間らしい生活を心から望んでいたんです」。キッチンカウンターの前に腰を下ろし、穏やかに語るご主人。キッチンの中では、奥さんが手動ミルでコーヒー豆を挽きながら、控えめに頷く。
T邸は埼玉県ののどかな田畑が広がる土地に建っている。閑静で自然豊かな場所だ。夫妻はもともと東京に暮らしていたが、アウトドアが共通の趣味ということもあり、田舎暮らしに憧れて家づくりを決めた。この場所は数年かけて見つけ出したそう。駅から何分といった利便性ではなく、むしろそのような快適さから離れて、地に足をつけ、落ち着いた日々を送りたいという思いが強かった。
この土地と出会うより先に、夫妻は理想的な工務店とめぐり合った。薪ストーブ専門店の「ファイヤーワールド」代表・富井忠則さんから紹介を受け、埼玉県越谷市に拠点を置く千葉工務店を知ったのだ。
同社は「合板ゼロ・外材ゼロ」を掲げ、自然素材の家づくりを20年以上貫き続けている工務店。宮城県での栗駒伐採ツアーに参加した際、夫妻は自分たちの求める家をつくるのに欠かせないと確信した。素材選びに対する情熱もさることながら、建主の要望に個別で対応してくれることも決め手に。「Tさん夫妻は住まい方の理想や家の完成図がはっきりと頭の中にあったんです。私たちはそれを形にする手助けをしただけ」と、同社の千葉弘幸社長は謙遜する。
設計については事前にしっかりと構想を練っていた夫妻。ご主人は趣味が高じて、自ら3Dソフトを使いパースまで描いていたほどだ。完成した家はほぼ自分たちが思い浮かべていた通りだという。
二人三脚で実現した
自給自足が叶う家
玄関の無双戸を引いて家に入ると、土間がキッチンまでつながる。視線の先にはカラフルなボルダリングの壁が。右手には一段上がった板間があり、ソープストーンの薪ストーブが鎮座する。天井が高く開放的な一室空間を、家の中央で交差する栗駒杉の太い梁と大黒柱が引き締める。驚くほどさっぱりとしているが、夫妻にとってはこれが理想的な住まいの形だった。
二人が最も大切に考えていたのは、日々のなかで“精神的豊かさ”を感じられること。快適に暮らせたとしても、そのために「エネルギーをたくさん使うような暮らしはしたくなかった」。電気やガスなどへの依存を極限まで減らし、生活空間も最小限に。薪ストーブを導入したり、冷蔵庫の代わりに高性能のクーラーボックスを使用したりすることで、住み心地を確保する工夫も欠かさない。一見禁欲的に見えるが、実は理にかなった空間と暮らし方なのだ。
「簡単にノーと言わず、建主さんの要望にはできる限り応えたい。そのための打ち合わせ回数では他に負けません」と笑う千葉社長に、ご主人がにこやかな表情で続ける。「おかげで想像以上に暮らしやすい家になりました。深呼吸すると気持ちがいいんです」。朝日とともに目覚め、薪割りをしたりDIYで薪棚をつくったりと、充実した日々を送っている。奥さんも「夜は暗くなったらすぐ寝ちゃうんですよ」と、楽しげだ。
この家に住み始めてわずか2カ月。二人の“自然回帰”の暮らしは始まったばかりだ。
所在地 | 埼玉県 |
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家族構成 | 夫婦 |
面積 | 敷地 368.363㎡ 延床 57.93㎡ |
竣工 | 2017年1月(工期 2016年7月~2017年1月) |
設計 | ㈱千葉工務店一級建築士事務所 |
施工 | ㈱千葉工務店 |
構造形式 | 木造平屋建て |
主な外部仕上げ | 屋根=ガルバリウム鋼板 外壁=杉羽目板 軒天井=そとん壁 |
主な内部仕上げ | 天井=杉羽目板 壁=珪藻土 床=尾鷲檜 |
株式会社 千葉工務店
〒343-0825 埼玉県越谷市大成町6-2371
創業以来、地域に密着した住まいのプロとして、お客様に真摯に向き合い、
お客様の暮らしそのものをデザインしてまいりました。
当社が厳選した体にやさしい自然素材や国産材を使用して
「心地よく、美しく、長持ちする家」をご提供しています。
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