nogashi trail

裏山で植物調査を始めてからかれこれ10年になる。丸いお椀をかぶせたようなまるやまの周りにいつどんな花が咲き、実をつけるのか、植物生態学者の伊藤浩二さんと毎月歩いて記録した。里山の環境の変化を調べる目的なのに「わー種のかたちがかわいい〜」「この香り和菓子に使えそう!」とついつい脱線してしまう。Scienceもartもfoodも垣根を越えて行ったり来たり楽しくて仕方ない。そこで里山を歩きながら菓子を楽しんでもらえたらと思いついた”Nogashi trail”
菓子折りやカフェのお皿の上に収まりきらない、素材の育つ風景や自然の不思議さ、心地よさを体で感じていただけたらと不定期で始めた和菓子付き里山ガイドツアー。

まずはご参加の皆さんとご挨拶。

小豆を栽培する畔や餡を炊く山水などについてお話し。

 

研究所の裏に咲く山野草の観察からスタート。

川に面した斜面に咲くオオイワカガミの花が見頃。艶々の葉っぱを一枚ずつとって山清水で洗う。

 

山笑う。新緑の緑に包まれながらまるやまへ歩き出す。

道端にはツボスミレ、ニオイスミレなど色とりどり。
自然栽培農家さんの畔のものを砂糖漬けにしたものを味わう。

 

アメリカに住んでいる時、グラノーラやドライフルーツを混ぜたtrail mixと言うハイキングに持って行くおやつがあった。のがし流は野山の草木や大豆や小豆をベースにつまめるもので「nogashi trail mix」。

オオイワカガミの葉っぱをお皿の代わりに使っておままごとみたいに童心に。
季節の蕗の葉をモチーフにした型で落雁を打つ。

 

木の芽に混じって山椒の花が付いていたので薯蕷饅頭を蒸した。

加賀丸芋をすりおろしたもので作るこしあんのお饅頭。
蕾がいろいろで選ぶのも楽しい。

 

途中で森の中にオオバクロモジの枝を見つけたので、削って菓子切りを作る。

手折ると柑橘系のような芳香が漂う。
茶道に使われる枯らしたものと違い鮮やかな色香。

 

クマイザサに包まれた生麩まんじゅうは朝摘みヨモギ、能登の海藻アオサ、地酒の白藤酒造さんの酒粕など。作りたてに「生きている!」と声を上げる方も。

食べた後笹舟を用水に流して遊ぶ姿もあり。

 

ちょうどワラビも出てくる頃なので浮島に焼印を。

里山は日本の伝統の色、形の宝庫。

 

どれにしようか迷ったり、お連れの方と半分こしたりしながら、お茶を楽しんでいただく。

抹茶やエスプレッソなど気楽にのがしと合わせて。

 

軽く歩いて畦に腰掛ける。足元の自然に触れやいつもと違う時間が流れる。
気がつけば緑や水と一体となる自分がいる。
和菓子は草木の力が宿った薬のようなものかもしれない。
こんな時だからこそ心に、体に効きますように。

nogashi trail

※上記の写真は昨年のnogashi trailの様子。今年も新しい「のがし様式」で開こうかと思案中。