umi菓

能登といえばおいしい魚。今頃ならトビウオに、縞エビ、サザエなどが食卓に登るはずなのに…

能登半島地震で輪島の海は、隆起が激しく漁業は甚大な被害を受けている。そんな中「能登半島輪島の漁業を照らし続けたい」と日東電機の沖崎俊彦さんが奮闘している。日東電機は「船のでんきや」として漁業関係者向けに発電機の取り付け、船舶の修理などをおこなってきた。今回の地震を受けて座礁した船の修理をする前に、「半壊した修理整備工場をなおすためのクラウドファンディングに挑戦するので手伝って欲しい」とお声かけいただいた。

沖崎さんとの出会いは12年くらい前のこと。漁船に使われている作業灯や通路灯などの船舶照明器具をアレンジして一般家庭や店舗などで使える「マリンランプ」を提案をしたいとのことだった。輪島港の近くの整備工場の機械に囲まれて想いを伺った。

展示会のブースには沖崎さんが撮りためた何気ない日常の風景写真を壁いっぱいに貼り付けた。輪島の海や漁船や漁師さん、日本海に沈む夕日。今となっては貴重な光景ばかり。

無骨でありながら温かみのある照明器具はあたらしい素材でできた空間より、「海風にあたって風化した木材やスチールの梯子などに展示した方が似合う」と思い、(今では地震で解体されてしまった)倉庫から色々運び出して設営した。

野外イベントでは古材に取り付けたさまざまな種類のマリンランプを、トグルスイッチをカチカチしながら付けたり消したりが楽しくて、お客さんが沢山集まってくれた。

「ロゴをデザインしてほしい」ということで、日東電機の愛称「210dk」を波に浮かぶ船に見立てて、サイドにマリンランプを取り付けて、ぷかぷか浮かんでいるような。昔の魚群探知機や古い扇風機などによく使われるようなレトロな淡いミントグリーンをイメージカラーに選んだ。

それから沖崎さんは「マリンランプ」のホームページを作ったり、ブログなどで発信しながらマリンランプの光の暖かさを伝え、全国津々浦々へ届けて来られた。地震後の工場が半壊、倉庫が全壊の中で、なんとか漁業の復旧を願いながら、今もマリンランプをつくりつづけている。

マリンランプ オンラインストア

そんな中、クラウドファンディングの返礼品に菓子をご依頼いただく。「船のでんきや」さんなので、すぐに手持ちの落雁の木型の中でアンティークの「ふね・いか・投網」を思い出した。

木造の屋形舟のような小さな型が彫ってある。能登のばあちゃん達が麦焦がしを「おちらし粉」と呼び、砂糖と水で練って夏場のおやつにしているのを思い出す。香ばしくてどこか懐かしい夏の味。

能登の魚醤「いしる」はイカの内臓と塩を発酵熟成させた調味料。きゅうりやナスの漬物や、鍋物の下味など万能調味料。(舳倉屋さんもいしるのタンクや加工場に被害を受けて現在欠品中ですが、ジェラートはあるようです)

和三盆に「いしる」をアクセントに甘じょっぱいコクのある生地を作る。

木型に詰めて打ち出すと、プックラとしたイカが三匹。小さな吸盤まで再現されていてかわいい。赤色はビート。

能登の外浦に続く揚浜式製塩「輪島塩」。(地震被害により臨時休業中ですが電話で注文可能とのこと)ミネラルたっぷりの甘みのある塩を和三盆に混ぜて塩飴のようにあっさりと。(輪島塩さんの商品デザインもさせていただきました。)

繊細な網目の意匠は打ち出すとき壊れやすいので注意深く。青いのはバタフライピーの色素。

ステンレス缶に日東電機のロゴスタンプを押して、干菓子を詰めていく。緑色の紙は朝市などで干物や魚などを包んでくれる薄葉紙。海素材の干物ならぬ干菓子なので。

栞をはさんで、

マリンイメージの紐を掛け、クラウドファンディングにご協力いただいた方々の元へ。

小さな菓子でのお手伝いでしたが、また能登の海に行き交う船のある風景と、美味しい食卓を夢見ています。

マリンランプの光を灯し続けることが、漁業の復興への道を照らしてくれると信じて。