こだわりを詰め込んだ 27坪の小さな自邸

東京都世田谷区 一級建築士事務所 光設計 注文住宅「こだわりを詰め込んだ 27坪の小さな自邸」
東京都

こだわりを詰め込んだ
27坪の小さな自邸

片流れの屋根、鶯色の外壁に、まろやかなアールを描く外塀。
一目でこだわりを感じさせるこの住まいは、
光設計の代表・栗原守さんの自邸だ。
栗原さんがこだわる経年美化、
そしてその住み心地をお客さんに伝える
自邸兼モデルハウスを案内してもらった。

東京都世田谷区 注文住宅 一級建築士事務所 光設計 栗原邸
設計=一級建築士事務所 光設計 施工=㈱大槻ホーム 写真=一級建築士事務所 光設計提供

江戸から学ぶ
設計の妙

「限られた敷地をいかに使うか。その視点を、僕は江戸から学びました」出迎えてくれたのは、優しげな眼差しに洒脱な佇まいの光設計の代表、栗原守さん。自邸「江戸Styleの家」は、同事務所との家づくりを望むお客さんを招くモデルハウスとしても開放しているという。

27坪という限られた敷地面積に加え、変形三角形という土地条件。都会の住宅地ならではの難条件を解決すべく、栗原さんは江戸の知恵を設計に落とし込んだ。
洗い出しのアプローチを上がり、コンパクトな玄関スペースに足を踏み入れた瞬間から、住まい全体にふんだんに使用された木材のいい香りに驚く。玄関をあがるとすぐに、小上がりの畳間が印象的なLDKが出迎える。「間仕切りは最小限に、江戸の住まいにもよく見られる引き戸も多用して広々と。夏には戸を外し開放的に、冬には戸を立てて暖かくという使い分けもできます」と栗原さん。

ダイニングの南側には大きく開口を切り取り、1日の光の変化を楽しめるように。開口から降りる小さな中庭は、周囲の視線を遮りながらも住まいの雰囲気に似合う木製の外塀を配した、坪庭を思わせるプライベートな空間。夏にはすだれ、冬には雪見障子で日を防ぎ、和の気配を後押しする。

ダイニングに隣接するキッチンは三角形の敷地形状をうまく生かし、調理機材や食品保管庫をスマートに収めつつ使い勝手よく。「洗い物をしながら外を眺められるのが気持ちいいんです」と奥さん。

中でもダイニングに向かう30cm高の小上がりの畳間リビングは、家族のお気に入りだ。珪藻土の壁に畳床に茶殻を敷いた琉球畳で、湿気の多い季節でもさらりと気持ちいい。和を感じさせながらどことなくモダンなしつらえから、夫妻の趣味のよさを感じさせる。「畳の質感も気持ちいい。ここで過ごす時はもっぱら裸足です」と奥さん。小上がりは障子で仕切れば、客間としても活用できる。

2階に上がると夫妻が寝室として利用する和室、眺めのよい南側の浴室へと続く。浴室は隣接する坪庭を臨み、夜景も楽しめる。コウヤマキのバスタブは、湯を張ると浴室全体がふわりとよい香りに満ちる。「僕がもともとお風呂好きで、こだわってつくりました。温泉旅館に来たみたいでしょう」と栗原さん。「この家に住んで変わったことは、家にいるだけで気持ちがよいので旅行にあまり出なくなったこと。ここに来てくれたお客さんにもよく言うんです、外出が減って経済的だよって」(奥さん)。

自然素材への
変わらぬこだわり

「もともと僕が農家の生まれというのもあって、自然素材の気持ちよさを感覚的に知っていたんです。自分で家をつくるなら、こだわりたいと最初から思っていました」(栗原さん)。

創業後の1990年頃から素材にこだわる設計を続けていたという栗原さんだが、さらにその思いを深くしたのは1996年頃から一般に知られるようになったシックハウスの問題を受けてのことだ。「『チルチンびと』や他の雑誌でも多く取り上げられ、より一層自然素材にこだわるべきだなと思うようになりました」と栗原さん。さらに「もともと無垢の国産材にこだわってきましたが、最近では産地とのつながりも大切にすべきと、2021年から埼玉県飯能市のNPO法人西川・森の市場にも参加し、地元の西川材を使った家づくりのお手伝いをしながらエンドユーザーが山とつながる機会も増やしています」と言う。光設計で住まいをと求めるお客さんを山に招き、一緒に伐採した木材で住まいを建てる試みも始めた。「時間はかかりますが、そういう機会があるとより一層家を大切にしてもらえる」と話す栗原さんが目指すのは、世代を超えて長持ちし愛される、つくり手も住まい手も誇りに思える住まいだ。

「この住まいは梁柱や土壁の仕上げなど、大工さんや職人さんの仕事の見える箇所がたくさんあるのですが、出来上がったときに大工さんたちもたくさん見にいらしたんです。自分の仕事の完成が見える住まいは、やっぱり誇らしいみたい」と栗原夫妻。さらに年を経て、飴色に育った木の住まいは、光設計の住まいを求める人びとに何よりの安心を与える。「建てて15年以上経つけれど、今の方がかっこいいんです」と誇る栗原さんの瞳から、家づくりへの真摯な自信が垣間見えた。

東京都世田谷区 一級建築士事務所 光設計 注文住宅「こだわりを詰め込んだ 27坪の小さな自邸」平面図

所在地 東京都世田谷区
家族構成 夫婦+子供1人
面積 敷地 91.18㎡
80.31㎡(1階 39.74㎡ 2階 40.57㎡)
竣工 2005年7月(工期2004年11月〜2005年7月)
設計 一級建築士事務所 光設計
施工 ㈱大槻ホーム
構造形式 木造軸組工法
主な外部仕上げ 屋根=ガルバリウム鋼板瓦棒葺き
軒天井=モルタル、リシン吹き付け
開口部=アルミサッシ
外壁=珪藻土+カナダ杉塀
主な内部仕上げ 天井=杉Jパネル厚38mm表し
壁=珪藻土(籾殻+藁入り)、月桃紙
床=カラ松無垢フローリング厚15mm

一級建築士事務所 光設計
東京都世田谷区北沢4-9-8 ガーデンハイツ弘瀬101
 
光設計は木の家をテーマに呼吸機能のある自然素材をできるだけ内装材として使い、
住まい全体が自然の状態で呼吸をして室内を快適な状態に保つ……。
そんな「呼吸する住まい」の設計をして30年以上の実績があります。

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