2022年、明けましておめでとうございます。
今年は寅年と言うことで、全国津々浦々のお菓子屋さんが趣向をを凝らして、練り切りの可愛い虎、薯蕷饅頭に虎の焼印、切ったら虎が断面に現れる羊羹などなどいろいろなお菓子の「虎」が生まれている。
私も「虎」に因んだ菓子をお作りしたいなと昨年から考えていて、頭の中で「虎の…おいしいお菓子…」と妄想。パッと浮かんだ一冊の赤い絵本があった。
ヘレン・バナーマン作「ちびくろ・さんぼ」(岩波書店)。ジャングルに出かけたちびくろ・さんぼと言う男の子が、トラたちに出会い次々と洋服や靴などを取りあげられてしまう。お互いに自慢し合うトラたちが喧嘩を始め追いかけっこを始め、ぐるぐる椰子の木の周りを回るうち溶けたバターになってしまう。ちびくろ・さんぼのお父さんがバターを持ち帰り、お母さんがおいしいホットケーキを焼いてくれると言う名作絵本。子供の頃読んでもらって、バターの香りにうっとりして「いますぐ、ホットケーキを焼いて!」と駄々をこねたのは私だけではないと思う。
懐かしくなって絵本をもう一度読もう探すと、意外な事実を知った。人種差別問題などで「ちびくろ・さんぼ」の絵本が絶版になったと伝え聞いていたが、2008年に径書房から「ちびくろサンボ」として80年前アメリカで出版された原書の版型やイラストをできる限り忠実に再現した本が作られていた。アール・デコの流れをくんだフランク・ドビアスの力強く美しいイラストはとても印象的で、子供時代とはまた違う絵本の楽しさを知った。
自家栽培の白小豆のこし餡に、茹でた黄身をこして混ぜた黄身餡と能登大納言のこし餡の練り切りをを重ねる。
生地をたたみながら虎の縞模様を作る。
虎が輪になってぐるぐる回っているイメージで丸めていく。様々な縞模様があらわれるのが楽しい。
窪みをつける。賽の目に切った小さな黒糖羹はサンボに見立てた。とろける発酵バターは餡と口中調味される。
輪島塗の重箱に並べてみる。一つとして同じ虎はいない。
和紙で羽子板の折り紙を折って、集落のツクバネの実を一緒に飾ってお正月気分を味わっていただいても。
お気に入りの絵本を片手に、コーヒーと召し上がっていただいても。雪景色に原色のドビアスのイラストが温かく元気ももらえそう。皆様にとって良い一年となりますように。