うちの庭の無花果(イチジク)。そろそろ今年の実りが終わりそうな気配です。近くのホームセンターで買ってきた苗木を植えて今年で6年目。息子の1歳の記念として植えたものです。毎朝2、3個くらいずつ熟していく実を採り、私と息子は朝食にそのままいただきます。妻は生食が苦手なので、コンポートに。毎日のちょっとした楽しみになっています。

 

年々大きくなっているのですが、印象はまだ幼い木。なんとなく息子と重ねてしまっているからかもしれませんが、染料として枝葉を切るには少し躊躇してしまいます。昨年は、秋が深まった頃に落ちはじめた葉を拾い集めておき、ラムウールのストールを染めました。染め上がった色は香色(こういろ)でした。少しくすんだ淡目の黄色といった感じです。いま時季の、窓から入ってくる秋の日差しに印象が重なります。

 

今年の葉も拾い集めましたら、昨年のラムウールストールをさらに重ね染めします。このイチジクの木や息子と同じように、年々育っていく重ね色を楽しんでいきたいと思っています。

 

星名康弘/植物染め 浜五

 

「植物図鑑」のはじまり

わたしたちは、植物の色に魅せられ、紙、糸、布などを染めている二つの工房です。植物で染めるということ。そこにある大切なこと、見過ごしてきたことをていねいに拾い上げていくために、染料となる植物の図鑑をつくりたい。見て頂いた方とのコミュニケーションをとりながら、新しい発見もしながら、制作を進めていきたい。そんな思いから立ち上げたプロジェクトです。
■監修:新潟県立植物園 倉重祐二

プロフィール

星名康弘
星名康弘(ほしなやすひろ)/植物染め 浜五新潟県十日町市生。
文化財建造物の修復の仕事を経て、染色の道に進む。 新潟市の海辺の集落に工房を構え、暮らしの品々を植物で染めている。
田中雄士
田中雄士(たなかたけし)/紙工房 泉紙漉き職人。
福井県越前市での修業の後、故郷・新潟県弥彦村に工房を開く。素材のもつ個性を大切に、一枚一枚丁寧な紙つくりを行なっている