今年の7月16日から8月3日に、新潟県立植物園にて「植物色図鑑 -色サンプル展2」を開催させていただきました。昨年に続き2回目の展示です。会場となる新潟県立植物園の園内には、新潟県内によく見られるものから海外原産の植物まで、多種多様な植物があります。それらの中から毎年10種ほどずつ染め試しています。ふだんはなかなかそういう時間をとれずにいますので、この機会はとても貴重です。

 

サワフタギは、そうしたなかで今年染め試した植物のひとつです。名前は知っていたものの、その姿は図鑑でしか認識したことがなく、いまでも特徴的な実のある時季でなければ、一見で判別する自信がありません。今回染まったのは海松(みる)色。海松という海藻の色が色名になっています。渋めの黄緑色、あるいは暗めの黄緑色という感じです。フジやエンジュなど、普段からよく染めている植物でも出している染め色です。

 

今回の染め試しでは、自分好みの新色が染めあがったスダジイやシダレカツラとの出会いがありました。でもそれだけが特筆すべき成果ではありません。このサワフタギのように、馴染みのある色を染められる植物にまたひとつ出会うこと。それも同じように大切なことと思っています。

 

星名康弘/植物染め 浜五

 

「植物図鑑」のはじまり

わたしたちは、植物の色に魅せられ、紙、糸、布などを染めている二つの工房です。植物で染めるということ。そこにある大切なこと、見過ごしてきたことをていねいに拾い上げていくために、染料となる植物の図鑑をつくりたい。見て頂いた方とのコミュニケーションをとりながら、新しい発見もしながら、制作を進めていきたい。そんな思いから立ち上げたプロジェクトです。
■監修:新潟県立植物園 倉重祐二

プロフィール

星名康弘
星名康弘(ほしなやすひろ)/植物染め 浜五新潟県十日町市生。
文化財建造物の修復の仕事を経て、染色の道に進む。 新潟市の海辺の集落に工房を構え、暮らしの品々を植物で染めている。
田中雄士
田中雄士(たなかたけし)/紙工房 泉紙漉き職人。
福井県越前市での修業の後、故郷・新潟県弥彦村に工房を開く。素材のもつ個性を大切に、一枚一枚丁寧な紙つくりを行なっている