2015年がスタートしました。年が改まると、無性に何か新しいことへチャレンジしたくなります。植物染めでも、私が今までに染めたことのない植物で、新たな色を出したいなと思っていたときに出会った植物が、この「金柑(キンカン)」でした。

 

このキンカンは工房に生えていた木ではなく、植物色図鑑の相方、星名さんからのお裾分けなのです。星名さんも、知人を介していただいたものだそうで、持ち主の方の庭のキンカンが雪の重みで折れたので、それを伐採されたものだとか。

 

縁あって私の工房へやってきた、未だ染めたことのない新しい染料植物を目の前にして、さてどんな色が出るかと考えて、直ぐに浮かんできた色は実の色でもある橙色っぽい黄色。橙色は難しいけれど、黄色なら染まりそうでしたので、まだ生の状態の葉と枝で染めてみました。枝から葉を取るときは、枝のトゲに注意しながら一枚一枚丁寧に取り、トゲ付きの枝と一緒に煮て色を抽出。キンカンから染め上がった色は控え目な檸檬色になりました。

 

今後は柑橘類で染めた様々な黄色を並べられたらいいなと考えています。今年の新たな目標としたいです。

 

田中雄士/紙工房 泉

 

「植物図鑑」のはじまり

わたしたちは、植物の色に魅せられ、紙、糸、布などを染めている二つの工房です。植物で染めるということ。そこにある大切なこと、見過ごしてきたことをていねいに拾い上げていくために、染料となる植物の図鑑をつくりたい。見て頂いた方とのコミュニケーションをとりながら、新しい発見もしながら、制作を進めていきたい。そんな思いから立ち上げたプロジェクトです。
■監修:新潟県立植物園 倉重祐二

プロフィール

星名康弘
星名康弘(ほしなやすひろ)/植物染め 浜五新潟県十日町市生。
文化財建造物の修復の仕事を経て、染色の道に進む。 新潟市の海辺の集落に工房を構え、暮らしの品々を植物で染めている。
田中雄士
田中雄士(たなかたけし)/紙工房 泉紙漉き職人。
福井県越前市での修業の後、故郷・新潟県弥彦村に工房を開く。素材のもつ個性を大切に、一枚一枚丁寧な紙つくりを行なっている