七十二候・第六十三候
鱖魚群(さけのうおむらがる)

豆皿を集めるたのしみ

12/16~12/20頃

豆皿を集めるたのしみ

器の店を営んでいると、これから手仕事の器を調えようというビギナーの方とお話しする機会があります。
「器に興味はあるけど、何から揃えたらいいかわからないんです」という声を聴くことも多く、そういうときには、『豆皿』のように小さな器から集め始めることを提案しています。
豆皿というのは、醤油や薬味に使う4寸(直径12㎝)以下のお皿のことで、手塩皿(おてしょ)と呼ばれることも。

なぜ、器初心者の方に豆皿をすすめるかと言うと、あまり難しく考えずに楽しめるアイテムだから。
かわいいもの、カッコいいもの、ナチュラルなもの、渋いもの等々——統一感や調和についてはさておき、さまざまなテイストのものを持っていると、日々の食卓にも変化が出て、食事の時間が楽しくなると思います。
大きめの器の場合、「失敗した!」と思ってもなかなか買い替えができないので、購入する際には慎重になってしまうもの。でも、収納スペースに困らない豆皿であれば、あまり悩まずに買い求めることができるのでは。
初心者の方であっても、豆皿を選ぶ経験を積んでいくうちに、直感的に自分の好き嫌いの感覚がつかめてくるはず。それは、その後の器選びのトレーニングにもつながっていくと思うのです。
そこで培われたセンスは、お皿や鉢、飯碗などの器を調えていくときに役立つことになるでしょう。

また、豆皿は、現代のものと古物をまぜて使っても面白いと思います。
僕はアンティークの店を回るのが好きなのですが、ちょっと気の利いたものでも比較的お手頃な価格で手に入れられるのが、古物のよいところ。金襴手の古伊万里や色絵の九谷、またはどこぞの産地で作られた土ものなど、歴史を刻んだ味わいある豆皿を手にすると、心が浮き立つものです。

食卓が華やぐ年末年始の時期は、特に、豆皿の登場回数が増えることでしょう。
用途を醤油や薬味に限定することはありません。たとえば、少人数でおせちを楽しみたいときはお重を使わず、黒豆や田作り、栗きんとんなどをちょっとずつ豆皿に盛って、お盆にしつらえると、かわいくまとまりますよ。ぜひおためしあれ。

さて、今年も「コハル・ノート Ⅱ」にお付き合いいただき、ありがとうございました。
みなさま、良いお年をお迎えくださいね。
2024年もどうぞごひいきに。