七十二候・第三十九候
蒙霧升降(ふかききりまとう)

器:川合孝知作 色絵角小鉢

8/17~8/22頃

九谷焼の色絵に親しむ

今年の春先に発表された長期予報では、この夏は昨年ほどの暑さにはならないだろうということでしたが、蓋を開けてみたら、至上最高気温を更新する夏に。
最近は、命を脅かすこの猛暑をいかにしのぐか、そのことばかり考えてしまいます。
これは地球規模の大きな問題ですが、一人ひとりができるのは、地に足をつけて、自分や大切な家族を守ること。暑い日が続くなか、少しでも健やかに生きていけるように、暮らしにまつわるあれこれを一つひとつ丁寧に整えていくしかないと思います。

そのひとつが、われわれの体を形作るための食であり、自然がもたらしてくれる季節の賜物をしっかり体に取り込むことで英気を養いたいものです。

この時季、八百屋さんに立ち寄ると、よく見かけるのが「つるむらさき」。
7月から10月にかけて旬を迎えるつる性の葉野菜で、暑さに比較的強く、真夏でも青々とした葉を茂らせることで知られます。
つるむらさきのいちばんの特徴は断面から滲み出すぬめりで、この成分の元となるムチンは、胃腸などの粘膜を保護してくれるのだとか。そのほか、抗酸化作用を持つβカロテン・ビタミンC、骨や血液の生成を助けるカルシウム・鉄分が含まれるので、暑さで弱った体を内側から整えてくれる効果が期待できそうです。
さっと茹でてお浸しや和え物にしてもおいしいと思いますが、油と合わせることでβカロテンの吸収が高まると言われるので、昨晩は、胡麻油と合わせてナムルを作ってみました。

盛る器については、そこはかとなくクラシックな雰囲気がただよう九谷焼の角型の向付を用意。
正方形という形には、食卓にフォーマル感を添えてくれる視覚効果がありますが、この器は、型を使わずに成形しているので、(正方形とは言え)カチッとし過ぎていないところがミソ。そのことが、器に独特の愛嬌をもたらしてくれています。
また、九谷焼にはさまざまな描画スタイルがありますが、黄色と緑(九谷焼では「青」)の色合わせは、かつて吉田屋窯が一世を風靡した時代絵に着想を得たもの。他の産地のやきものには見られない、九谷焼ならではの華やかな絵付けに目を奪われてしまいます。

ナムルはカジュアルな副菜ですが、こうした器を合わせれば、お料理が数割増しでランクアップしそうです。
旬のお料理に器を合わせる楽しみって、ジグソーパズルに興じるときと似た感覚かもしれませんね。コーディネートがパシッと決まったときには、パズルの最後のピースを埋めたときと同様の喜びを得ることができるのではないでしょうか。
暑い日が続くなか、楽しく健やかに心身を保ちつつ、過ごしやすい秋の到来を待つことにしましょう。

 

(器:川合孝知作 色絵角小鉢)