七十二候・第二十八候
乃東枯(なつかれくさかるる)

梅子黄

6月21日~6月25日頃

梅雨寒の日には

早いもので、2022年も半分が終わろうとしています。まもなく訪れる六月のみそかは、年末の大晦日に次ぐ節目の日。
半年が終わるこの日には「夏越の大祓(なごしのおおはらえ)」と呼ばれる神事があり、茅の輪くぐりをおこなって災厄除けと無病息災を祈ったりするものですが、この時期の和菓子店でよく見かけるのが、「水無月(みなづき)」というういろう菓子。
ちょっと前まであまり見かけなかったお菓子なので、どういう由来のものなのか検索してみたら、これって京都のお菓子なのですね。三角形に切ったういろうは、かつて庶民の手に入りにくく貴重だった氷を模したもので、上にのせた小豆には邪気を祓う意味が込められているのだとか。
最近になってこのお菓子を東京でよく見かけるようになったのは、節分の恵方巻と同じで、商魂たくましいデパートや菓子店が、関西独自の風習を新たな商機に結び付けようとした、ということなのかもしれません。

さて、この原稿を書いているのは、まだ6月上旬。他の地方に先駆けて梅雨入りした東京では、少々肌寒い日が続いていますが、この間ラジオ番組を聞いていて『え?そうなの?』と思ったのが、梅雨寒(つゆざむ)というのは関東を含む東日本特有の現象だということ。
西日本出身の天気予報士の方が番組の中で語っていたのは、『関東に来るまで梅雨寒という言葉自体を知らなかった』というエピソード。二方面を海に囲まれた関東地方は、東から冷たい風が吹き込むと梅雨寒になるそうで、これは西日本では見られない現象なのだそうです。

想像に難くないことですが、山々に囲まれた京都盆地の梅雨は相当に蒸すのでしょうね。
氷菓のような見た目を持つ涼やかな水無月は、そういった風土ならではの産物で、本来であれば、冷たいお茶とともに供することで、目と舌の双方で涼を感じることができるのでしょう。
ただ、ここ数日間東京で続いているような低温の時には、熱く淹れたお茶とともに水無月を。横広の小盆に茶菓を並べてのせるとスペシャル感が演出できて、梅雨寒のお茶の時間も楽しく感じられそうです。
少し冷えた胃の腑をあたためつつ、この先にやってくる暑い暑い夏、そして残りの半年をすこやかに過ごせるように心と体をやさしく労わってあげましょう。

 

(銘々皿:明治~大正期アンティーク 湯呑:森山窯作 小盆:松﨑修作)