七十二候・第五十一候
蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)

マグとともに秋の夜長を楽しむ

10月18日~10月22日頃

マグとともに秋の夜長を楽しむ

うつわにはいろいろな用途とそれに伴う形状がありますが、飯碗や箸のようなアイテムについては、「属人器」という呼び名でカテゴライズされることがあります。
これらの特徴は、それぞれ占有者が決まっていること。つまり「私だけのうつわ」だということです。
みなさんのおうちでも、飯碗やお箸については自分が使うものが決まっていると思います。各人に属するうつわだから、属人器。言い得て妙ですね。

「属人器」は日本のうつわ文化特有のものだと思いますが、最近はこのカテゴリーに、「マグ(マグカップ)」というニューフェイスが加わりました。
もともとハンドルの付いたカップを持たず、飲み物には湯呑やそば猪口を使ってきた日本人。洋食器であるマグはわれわれのうつわの世界ではまだ歴史が浅いアイテムですが、いつの間にか属人器としての地位を得てしまうくらい、日本の食卓に浸透しています。

僕もお気に入りのマグをいくつか持っていて、やはりこれらは他の家族には使わせない属人器。もはや「マイマグ」と呼んでしまってもよい存在です。
家では頻繁にコーヒーを飲むので、仕事をするとき、TVを見ているとき、家族との団らんのときにも使いますが、いちばん活躍するのは、ひとり部屋で読書を楽しむ時間でしょうか。
秋冬は夜が長く、春夏とくらべると活字を追う時間が増えてしまいがち。そんなとき傍らには、あたたかいコーヒーを淹れたマグが欠かせません。

マグは自分の手の延長線上にあるパートナーのようなうつわだと言えるかもしれません。
そう考えれば、自分の美感を満たす美しさやかわいらしさはもちろん、指を掛けたときの心地よさなど、自分の目と手と心になじむものを選んでみたいものです。
僕の場合、PCや書類の傍らに置くことも多いし、読書のときもページに目をやったままマグに手を伸ばすので、見た目が好みであるのと同時に、倒れにくい形状であることも大事。何度も書類にコーヒー染みをつけてしまっているような粗忽者なので、安定感や重量感なども重視して選びます。
みなさんはどんなポイントを重視して、「マイマグ」というパートナーを選んでいますか?

(海鼠釉マグ:白岩焼和兵衛窯 渡邊葵作)