七十二候・第三十八候
寒蝉鳴(ひぐらしなく)

カレープレート:矢口桂司

8月12日~8月16日頃

 

黄色い器に元気をもらう

毎年この時季になると同じ事ばかり書いていて、自分でも芸がないと思いますが、それでも書いてしまいます。
今年の夏は特別に暑い!
このままだと暑さにやられっぱなしで活力がそがれていく一方ですね。

35度を超える外気温とエアコンがきいた屋内の温度差がはげしくて、体がしんどく感じられる方も多いと思いますが、これは自律神経の乱れが原因。専門家は、暑いお風呂に入るなどしてしっかりと汗をかくのがよいと言っていますが、僕はそれに加え、辛い物を意識して摂ることで意識的に汗をかくように心がけています。
もともとカレーが大好きでよく作るのですが、長時間火を使うと室温がぐっと上がってしまうので、夏の時季は、強い火力で一気に仕上げられるドライカレーを作る機会が増えます。カレー粉だけだとちょっと辛みが足りないような気もするので、レッドペッパーのパウダーを追加するなど、ちょっとスパイシーにアレンジして。

そして、器を商う者としては、どんな器に盛るかがとても大事。
夏であれば、寒色系の釉色の涼しげな見た目のお皿に…… という考えが浮かびますが、それとは逆に、刺激的な色合いの器を用いて沈みかけたモチベーションをしっかり上げていくという手もあるのではないでしょうか。
たとえば黄色——。太陽のようなイメージのこの色は、神経や脳を活性化してくれると言われます。
ドライカレーも黄色ですが、同じ黄色の器の視覚効果で、脳に喝をいれてみる、なんていうのもアリでしょうね。

ここからは余談になりますが……。
以前、インスタグラムに掲載したドライカレーの画像を見た人から「あれ? ルウみたいなものはかけないの? これって未完成?」と問われ、はっとしたことがありました。
そう、僕にとってのドライカレーは、何十年も前に、母が具材とごはんを炒めて作ってくれたカレー味のチャーハン。昭和の頃はドライカレーと言えば、シンプルなあのスタイルがスタンダードだったような気がします。
今は、キーマ系のルゥをかけたドライカレーが主流なのかもしれませんが、僕はいまだにカレーチャーハン派。おふくろの味的なノスタルジーを感じてしまうからでしょうか。

黄色いお皿に黄色い昭和のお料理をのせれば、「元気いっぱい!」といった印象。
辛めに味付けしたドライカレーを頬張りながらいっぱい汗をかけば、暑い夏もどうにか乗り切れそうな気がしてきます。

(カレーディッシュ:矢口桂司)