七十二候・第一候
東風解凍(はるかぜこおりをとく)

耐熱器:山下秀樹作 ランチョンマット:田中朋也柞

2/4~2/8頃

冬から春へ

友人から教えてもらい、冬から早春にかけて食べるようになったお気に入りの野菜が『プチヴェール』。
ケールとキャベツを掛け合わせて作られた『結球しない芽キャベツ』で、見た目は緑色の花のよう。キャベツほど甘くないので、昨今の野菜の糖度の高さにちょっとだけ違和感をおぼえている僕にとってはありがたい素材です。

以前は、わざわざ九州の唐津など遠方から運ばれてきたものを買っていたのですが、ついこの間、地元で作られていることを知ってからは、近くの農協直売所で手に入れるようになりました。
僕が半世紀にわたって住んでいる世田谷の端っこの町は、現在のように宅地化が進む前は農地が多かった地域。
通っていた小学校の裏手にもかつては広いキャベツ畑があり、そこで捕獲した青虫をモンシロチョウに羽化させていた同級生がいたことを思い出します。これまで考えたこともなかったけれど、キャベツの生育に向いているということは、そのお仲間であるプチヴェールの生育にも向いていたわけですね。
まさか徒歩圏内の農園で作っていたとは……。灯台下暗し。

ちょっとゴワゴワした食感のプチヴェールは、生食より火を通して食べるのに向いていると思います。
これまではローストにしたり、衣をからめて天ぷらにしたりして食してきましたが、先日はタラの切り身とプチトマトと合わせてアヒージョに。

バルなどでは、アヒージョにはスキレットという鋳鉄の小鍋を使うものですが、家であれば、一人用の土鍋や陶製の耐熱皿などを使ってみてもよいのでは。
タラとニンニクを並べてオリーブオイルを振り、弱火でグツグツ。タラに火が通るのを見計らってプチヴェール→ミニトマトの順番で具材を投入し、歯ごたえが残るくらいで火を止めて。耐火土特有の火持ちの良さでゆっくり火が通り、タラはふっくら、プチヴェールとミニトマトもほどよく柔らかに仕上がります。
耐火土を使った器は一度あたたまると冷めにくいので、アヒージョをはじめとして、様々な用途に。火から下ろしたら、他の器に移し替えずに熱々のまま食卓へ供することができて便利ですよ。

ただし、使うときには留意しておいた方がよいことも。
直火OKとされている器に使われている土は、ペタライトなどを原料とし、火に耐えうるよう精製されたものですが、急激な温度の変化は避けたいところ。いきなり強火にかけたり、まだ器が熱い状態で冷水を注いだりすると、割れの原因になってしまう可能性があるので、取り扱う際にはほんの少しだけ注意しましょう。

 

(耐熱器:山下秀樹作 ランチョンマット:田中朋也柞)