七十二候・第五候
霞始靆(かすみはじめてたなびく)

銀彩カップ:フルカワゲンゴ作

2/24~2/28頃

銀彩のボウルを育てる

昨年の6月に書いた記事「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」の中で、野菜を焼いて食べている話をしましたが、あれは夏の話。
寒い季節になってから、わが食卓のメインは、野菜を使った汁物(スープ)にシフトチェンジしています。
手を変え品を変え、そのときどきの旬の物を使って。洋風(コンソメ)、中華風(鶏がら)、和風(だし)と味付けを変えて、飽きることなく毎日楽しめるのが汁物のいいところですね。

この間、仕事帰りに八百屋さんを覗くと、豊作のブロッコリーがお買い得になっていたので、しっかり2株購入。
小房に切り分けてからいっぺんに湯がいて、1.5株分は粗熱を取ってから冷凍で保存。残りの半株を、この日の夕食用のスープに使用します。
みじん切りにした玉ねぎを同じくみじん切りにした少量の生姜と炒め、湯がいたブロッコリーと牛乳とともにミキサーで粗めに撹拌。微量のコンソメを加えてあたためて、素材の風味を生かしたポタージュを作りました。

注いだ器は、リム付きの陶製のボウル。
それも『銀彩』という加飾技法で表面に銀の絵具を塗った、贅沢な趣の手仕事です。
これまで、磁器の絵付けにおいてワンポイントで使われるケースが多かった銀彩ですが、このボウルは、荒めの陶土で成形した器体の全面に着彩。銀の絵具を表面に塗り、低温で焼き付けて定着させています。

シルバージュエリーをお持ちの方はご存知だと思いますが、銀は酸化して黒ずんでいく特徴を持っていて、銀彩を施したやきものについても同じ現象が起こります。
ただ、この器について言うなら、黒ずみは(汚れではなく)いぶし銀のような渋さを醸し出し、ざらりとした陶土の質感と相まってよい味わいに変化していくことでしょう。
やきもの(特に陶器)は、使うことによって少しずつ風合いを変えていくのがふつうです。このことを器の世界では『育てる』と表現し、能動的に器を育てていくことは、器の楽しみのひとつだと言ってもよいと思います。

銀彩というと、ちょっと敷居が高そうなイメージもありますが、画像のような陶製の銀彩器であれば、日常の愛用品として楽しむことができそう。
日々使うことで、暮らしを豊かにしてくれる特別なひとしなに育ってくれるかもしれませんよ。

(銀彩カップ:フルカワゲンゴ作)