この “広場 ” のコラム 「私のぬりかべ散歩」でもおなじみ、小林澄夫さん責任編集 『左官読本』(風土社刊)が、近々、発売される。
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小林さんが、ラジオに出演したことがある。司会者に「床屋に行きますか?」と訊かれ「学生時代を最後に、行っていません。後ろに束ねて、自分で切ります」と答えていた。この番組のゲストは、自分が大切にしている容器を持ってくることになっていた。小林さんのそれは、煙草ピースの缶だった。話のなかで、どういう弾みだったか「中野重治」の名前が、でた。私も、その時どういう弾みか、中野重治の「豪傑」という詩を、思い浮かべた。
家むかし豪傑というものがいた
彼は書物をよみ
嘘をつかず
みなりを気にせず
わざをみがくために飯を食わなかつた …… (『中野重治詩集』岩波文庫)
ご存じ、小林さんも、詩人である。詩人のこころで、ずっと、土や壁と語らってきたのだろう。
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『左官読本』1号は、特集・土蔵。目次から ― 真の巻 / 土蔵の生命は物の保存にあり ・ 行の巻 / 土蔵は風土と暮らしとともに ・草の巻 / 土蔵に残る左官の手跡 ・ 座談会 / 左官の過去、現在、未来 ー 久住章、植田俊彦、加村義信、小林澄夫、山下武秀 ― 6月1日発売。定価(本体926円 + 税)。