『日本の美邸』8号の特集は「別荘」。
〈別荘-人と自然の間にあるもの〉と題して、建築家・堀部安嗣さんが、論考している。その文章からのいくつかをお目にかける。
…… 建築とは言うまでもなく自然と人の間にあり、それらをつなぐものである。ゆえに“ 対人”と“対自然”の両方のステージを行ったり来たりしながら設計は進んでゆく。容積率最大に建てたい、外観はモダニズム調で、コストはなるべく抑えたい、防犯対策は完璧に、人があっと驚く造形を、といった要素に向き合うのが対人のステージだ。反対に風雨を合理的に凌ぎたい、冬は暖かく暮らしたい、気候風土に迎合した構法や素材や景観にしたい、家の庭で畑をしたい、といった要望に向き合うのが対自然のステージであるとおおよそ区別することができる。 …… そもそも別荘は人の贅沢な欲望である。だからこそ、その原罪を認識し、欲望を畳みながら自然の美しさを引き立てる存在にならなければならない。 …… 人と人とが穏やかに向き合うことを可能とするために、自然、死者、過去を人と人との間に介在させること。それが建築の役割であるということを認識するために別荘の設計は大きな意味を持つように思う。
そして、これらの文章のあとに「北杜の家」「富士見の家」と題した堀部さん設計の作品が、掲載されている。写真と文をあわせてご覧になることを、おすすめする。
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『日本の美邸」8号は、このほか 益子義弘、横内敏人、泉幸甫、早草睦惠、木下龍一、井上洋介、オークヴィレッジらによる、別荘傑作選。 Art & Cultureコーナーには バカラ-至上の美を求め続けて / 江戸の贅を探る・江戸の別荘・安原眞琴 / 小倉織・築城則子 / よもやま対談・風土と人と工芸品・築城則子×古川三盛 / 私の着物話・ささやかな民俗学・古川三盛… など、充実の136ページ。
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『日本の美邸」8号は、12月2日発売です!