10/13~10/17頃
秋を楽しむ染付
ついこの間まで真夏日が続いていたと思ったら、いつのまにか秋の気配が深まってきましたね。
これまでしばらくは火を使わないお料理を選んで作っていましたが、自然と火を使いたくなる時季になりました。
この時季に八百屋さんの店頭で見かける旬の野菜と言えば、秋ナス。
「秋ナスは嫁に食わすな」という有名なことわざには、姑の意地悪(おいしいから嫁には食べさせたくない)、姑のやさしさ(嫁の体を冷やすことになるから食べさせない)など、その解釈に諸説あるようですが、いずれにしても、秋ナスが日本の食卓には欠かせないものであったことを示すものだとと思います。
夏から秋にかけての我が家の食卓の定番は、ナスの揚げびたし。
ナスは油との相性がよいので、揚げることでその旨みが一層引き立ちますよね。
まずは、かつおと昆布の香りを立たせた出汁に、少しのしょうゆとみりんを効かせて煮立てたつゆを用意します。
皮つややかに水分を多く含むこの時季のナスは、夏のそれよりも種が少なく、味わいが濃いように思えます。夏ナスよりは短時間で、表面がほどよく色づいたら引き上げ、熱いうちにつゆに浸しましょう。
夏はよく冷やした方が食も進みますが、この時季であれば、常温でじんわりと2~3時間。よく染み込んだつゆの風味が、口の中にふんわり広がります。
器に盛るときは、彩りに青ねぎを添えて。ごはんのおかずにもよく合いますし、晩酌のお供にもぴったりだと思います。
盛りつけたのは、落ち着いた青の絵付けが美しい染付の鉢。
澄んだつゆの深い色合いと、油をまとったナスの艶が静かに映え、白磁の余白も凛とした印象です。
筆の動きを活かした可憐な花の文様が、食卓にそこはかとなく華を添えてくれます。
17世紀に国内生産がはじまった染付は、これまで400年近くも日本の暮らしを彩ってきた器です。
磁器が貴重だった時代、その青と白の対比は清らかさと洗練の象徴とされたもの。華美な赤絵や色絵の器とは異なり、派手さを避けつつもどこか気品が漂う染付の美意識は、現代の食卓でも愛され続けています。
素朴な家庭料理であっても上品に見せてくれるのは、青という色が持つ静かな力のなせる業ではないでしょうか。
(器:工房禅 横田勝郎)