ゴミの捨て場の行方

わが町のゴミ収集は分別方式で有料(ごみ袋を買う)である。
 燃えないゴミ、燃えるゴミ、ビン、カン、ペットボトル、新聞など、雑誌類、古着類などなど。そのほかに粗大ゴミなどは役所に届けを出せば取りにきてくれるようだ。
 大昔のことは知らないが、僕がはじめて親に言われてゴミ出しをした頃は、西隣りのT家との境界線上に置くことになっていた。

 このTさんが敷地内に二棟のアパートを建てて何年か経ったあとで、市役所のほうから、Tさんのところはアパートで世帯数も多いのでゴミの量も多くなり、処理が大変なので、山口さんのところは、斜向かいとその隣のお宅の間にゴミを出してください、ということになった。
 場所が変わって数年経ったころ、丁度僕がゴミを持っていくと、同じ場所にゴミを出す見知らぬご婦人がいらっしゃったので、「おはようございます」と挨拶すると、「それはいいけど、あなたは誰?」と誰何された。ゴミの不当投棄だと勘違いされたのだ。余所からゴミを捨てに来る人がいるのだ。こうしたことに対して、人は大変、シビアなものだ。「斜め向かいの山口です。Tさんのところが大所帯になったので、市のほうから、こちらに場所を移すようにいわれたので」とお答えすると、きまり悪そうな表情で去って行った。
 家に戻って、この件を、まだ元気だった母に報告すると、「あんた、そんなこと、よく憶えていたわね。あたしはすっかり忘れていたわ」と言う。

 そんなことがあってから十余年。斜め向かいのお宅が引っ越して更地になった。問題は、今後ゴミをどこに出すかだ。このごろはカラス除けのゴミ・ネットが、この更地になったお宅と、その隣のお宅の間に出されていた。そのゴミ・ネットが斜め向かいのお宅が更地になった後、忽然と姿を消したのだ。
 これは困ったことになった。どこにゴミを出していいか分らなくなってしまった。
 しばらくして、ゴミ・ネットは決められた曜日の朝、更地の隣の家の前に出ること、ゴミ回収車が去った後は、そのお宅が自宅敷地内に取り込まれるようだと分かった。
 つまり、そちらのお宅がゴミを出すタイミングと合わなければ、我が家はゴミを出せないということになる。日ならずして室内にはゴミ袋がたまりだした。我がゴミ出しの運命やいかに。