年に一度、部屋の模様替えをしたくなる。
自室の中で机とベッドの位置を替える程度の模様替えなのだが、ある日、突然、やる気になる。おそらくは、若かりし頃、舞台の仕事をしていて舞台転換をやることがあったからだろう。椅子やテーブルを動かすだけで居酒屋になったり応接間になったりするのは面白いものだ。
なんのことはない、何年間かのうちに色々な物が室内に散乱して、今風にいえはゴミ屋敷、汚部屋になってしまうので、それを解消したくなるのだ。うずたかく積まれた、主に書籍類を整理して動線を確保する。
一念発起して、模様替えの衝動を抑えられなくなるのだ。心機一転、ともいえる。新しい見慣れない自室で、新しい仕事に挑戦したくなるのだ。
すでに寝室を二階から中二階に移したことは、書いたと思う。今回は、それに続く、かねてよりの懸案事項。書斎と応接間の椅子とテーブルを交換するという作業だ。
変奇館の広い一階を二つに仕切って、一方を応接間とし、残りを仕事用の書斎にして、父、瞳が愛用していた。この書斎には大テーブルが二つ、エル字状に置かれていて、一つを書き物机とし、もう一つを資料参照の場所にしていた。父の死後、僕は譲り受けた書斎から資料用の大テーブルを二階の今は物置になっている僕の居間に移した。
今回は残る大テーブルを応接間に移動して、そっちにあったソファを書斎に移すという引っ越しだ。代わりに書き物机は若いころ使っていた小振りなものを書斎に据えた。
今年、二十七回忌になった父の書斎を受け継いで四半世紀。溜まった文献資料などを応接間に移して、書斎をスッキリさせるというのが今回のテーマだ。当然のことながら、僕独りでできる作業ではなく、業者にお願いした。
一段落したときに、作業の手を休めた業者が、ちょっと見てくれ、と僕を呼んだ。応接間に二畳サイズの電気カーペットが敷かれていたのだが、だいぶ古くなっていたので、撤去することにしていた。そのカーペットの下の床が腐っているというのだ。床はコンクリートの打ちっぱなしの上にフローリングを敷いただけだ。湿気が入る余地はないのだが、一メートル四方ほどが乗るとブカブカする。踏み抜く危険があるので、いずれ直さなくてはならないだろう。意外な伏兵ありだ。