境界線について

我が家の東側に私道を隔てて二階建てのアパートがあったが、取り壊されて売り土地という立て看板が建てられているということは、すでに書いている。
 ある日、遅めの昼食を近所の中華蕎麦屋でとろうと思って、自転車に乗って東側の更地の前まできたら、この更地に隣接するお宅のご主人が土地測量の業者と話し込んでいる。それだけで、僕にはだいたいの事情が飲み込めた。
 例の境界線問題か、僕はため息まじりに、事の成り行きを眺めながら、一旦は通りすぎたのだった。

 中華蕎麦で簡単な昼食をとって帰宅の途についたが、まだご主人と業者の話し合いは続いている。
少しばかりトラブルになっている様子だ。この件は我が家が隣接する西隣りの敷地が競売にかけられ、その後、建売住宅になったときにも発生したので、事の成り行きは理解できた。
 有体にいえば、我が家を含めた東西百メートルばかりの住宅は、最初に宅地造成されて分譲地として販売されたときから、市道に十センチばかりはみ出しているのだ。
 この事実はかなり前から表面化していて、基本的には建て替えるときは市道に面した敷地を市に返上するということになっている。 我が家のことでいえば、西隣りの敷地が六棟の建売住宅になったときに、正しい測量に基づいて建売住宅は十センチほど南に下がって建てられ、市道は広がり、側溝が敷設された。それに伴い、お隣と我が家の間には、ここより道幅が狭くなりますという道路標識が建てられたのだった。こういうことをお役所仕事というのだろうか。わずか十センチばかりのことなのだが。
 一軒置いて東隣りのご主人は、そのことで測量業者と境界線の再確認をしていたのだ。

 瞳が亡くなり母が土地を相続したときも、母が亡くなり、僕が相続したときも、土地の名義変更をしたのだが、この件は問題にならなかった。
つまり、今は現状維持されるが、売却されて建て直すときには、正式な市有地と私有地の境界を土地台帳に記載されている通りにする、ということなのだろう。
 口さがない近所の事情通が、変奇館は不法建築だと噂するのは、このことを指しているのだった。