珍鳥がやってきた

前言訂正。数カ月前に今年は庭にウグイスが来ないと書いたが、五月の下旬になって、頻繁にその声を聞くようになった。毎日、朝晩、近所の見回りをするように渡ってきて、ひとしきり鳴くと去っていく。
 ご存じのように鳴いているウグイスは姿を見せないという。極まれに樹木の少し開けた小枝に停まっている姿を垣間見られることがある。かねて用意の双眼鏡で覗いてみると、小さな身体を精一杯膨らませて口を大きく開くと全身を激しく震わせるようにして大きな声でさえずる。かなり体力を消耗するのではないだろうか。

 我が家の庭が狭いことは何度が書いている。また、その狭いところに樹木を密植したために深山幽谷の趣があるということにも触れている。その昼なお暗い狭い空間に、毎年、一度は見かけない鳥がやっている。毎日、飛来する鳥もいれば、通りすがりの一見さんもいるところが面白い。
 今年は、なんとアオゲラがやってきた。折からの自粛要請で自宅にいる時間が多いから目撃できたのかもしれないが、居間でテレビを観ていると、視線の片隅を鳥の影が横切った。大きさはヒヨドリ程度。珍しくもないなあと見上げると、庭の東南の際に植えたブナの幹に不思議な態勢でとまっている鳥が見えた。これは、と驚いて、やはり双眼鏡のピントを合わせると、なんとキツツキである。
 思えば、我が家が国立のこの地に引っ越してきた直後に隣家の庭の枯れ木を激しく叩く音に驚いたらアカゲラであった。しかし、それっきりアカゲラをみることはなかった。
 図鑑で確認すると、今回の珍鳥はアオゲラのオスであった。幹のウロを突ついては中にいる虫をほじくりだして、しきりに食べている。満腹したのか、しばらくしたら飛び去っていった。

 アオゲラの摂食行動を目撃できたことは嬉しかったが、実は困ったことでもある。それは、おそらくブナが衰えて虫が付いたからだ。以前、コゲラがよく来ていたのは、やはり今にも枯れそうな木があったからだ。その木が枯れて撤去したらコゲラも来なくなった。本当のことをいえば、今年はガビチョウの番いが五月一杯、頻繁に飛来して、けたたましい鳴き声をあげていた。最近では一橋大学の構内をはじめとする市内各所に定住しているので珍しいとはいえないだろう。
 さて来年はどんな鳥がくることやら。