歯についての色々なこと(2)

物心ついたときから虫歯に悩まされていた、ということは先々月、書いた。
 小学校の低学年のころ、母に連れられて近所の歯医者に通ってた記憶は、すでにおぼろげなものになっている。そのころから今治水を使用していて、一滴垂らすと、不思議なことに歯痛が一時的に軽減するということを知っていた。後年、映画「マラソンマン」を観たとき、主人公を演じるダスティン・ホフマンが歯痛を押さえるために使うところで、我が意を得たりとばかり膝を打ったのは僕ぐらいのものではないか。主成分はチョウジ油で、なにやら怪しげな小瓶に入っていたのも映画と一緒だった。

 小学校の定期的な健康診断で歯科医から、何本も抜歯という宣告を受けるのは辛かった。
 しかし、その後、数年間は歯科医に通ったという記憶がない。虫歯を削って詰め物をして、それで多少は持ったのかもしれない。
 生え揃った永久歯は、目も当てられない乱杙歯になっていた。国立に引っ越してきて、右下の奥歯に金冠をかぶせたのは覚えている。
 なぜ、覚えているかというと、高校生になってすぐ、徹底的な歯科治療を行うことになったからだ。
 これは両親が伊丹十三さんの紹介してくれた歯科医で治療することになり、僕もその当時は大先生と共同で治療にあたっていた青年医師にお願いすることになったからだ。
 そして、虫歯の治療が一段落することになったときに、この国立で治療した金冠を取り除くことになったから、よく覚えているのだ。
 虫歯治療を終えたときに八重歯を抜歯するという宣告を受けた。しかし、その歯だけは虫歯ではなかったので、先生に何とかならないのかと訊くと、歯列矯正というものがあり、それをすれば、この歯を助かるということだった。

 やれ嬉しや、と思ったら、そのためには、余計な歯を四本抜くといわれた。そして、国立で入れた金冠は大きすぎるので、歯列矯正後の歯並びに合わせて、新しく造るということだった。
 なにやら大工事で大変なことになってしまった。両親にもかなりの金銭的な負担をかけることになってしまった。そして、その歯列矯正には高校の三年間を費やすことになった。父、瞳は、男子が歯並びを気にするとは何事だと感じ、息子が全くの別人格であることを、このとき悟った書いている。