入浴方法あれこれ(2)

昔確か大友柳太朗主演だったと思うが、小原庄助さんの映画で、朝寝坊している庄助さんを三太夫が起しにきて、「殿、もう起きてください」と言うと、庄助さんが「朝寝は我が家の家訓である」と応じる。それに対して三太夫が、「これ以上寝ていると昼寝になります」と答えて、庄助さんがあわてて起き出す、という場面があった。

 僕も、かつては昼寝に近い時間まで寝ていたが、寄る年波で、現在は七時前には起きている。酒はもっぱら夜酒になる。
 したがって、深夜に帰宅してから入浴するのは、はなはだ危険である。脳卒中や心臓麻痺は飲酒して高温の湯船に漬かったときにおきやすいという。
 三十八度のお湯に三十分漬かるという健康的な入浴方法を実践することにして、時間も午前中に入ることにした。
 しかし、数紙講読している朝刊を読み、朝食の準備をして、食べた後の後片付けをしてから入浴すると、いきおい十時過ぎになる。この時間帯が宅配や各種の集金の時間とぶつかっている。
 入浴中に表玄関の呼び鈴がなっても、浴室内では聞こえないことがある。お湯を出していたりしたら、まったく聞こえない。
 あとで郵便受けを見ると、再配達連絡表が入っていたりする。
 以前にも少し触れたかもしれないが、ガス水道電気の支払いは口座引き落としにしているが、新聞は集金にきてもらっている。ちょっと前に、近所のアパートで孤独死が発生したとき、第一発見者は新聞の集金人だった。また、新聞配達は深夜、早朝、夕刻と空き巣、強盗の活動時間と重複するので、抑止力なるのではないかと考えている。だから、ご足労だが戸口まで来てもらっているのだ。
 宅配は滅多にないが、午後はたいがい外出してしまうので、時間指定ができるときは、午前中にしてもらっている。

 この様々な来客を入浴しているからといって追い返すわけにはいかない。
 そこで一計を案じて、起床して新聞を郵便受けから食卓まで運んだら湯船にお湯を溜めて、ただちに入浴してしまうということにした。実は、この順番が、もっとも一般的なのではないか。特に低血圧の方などには推奨されているようだ。
 つまり、図らずも庄助さんの朝湯を踏襲することになってしまった。