冬支度

 短い秋があっと言う間に去り、また極寒の冬が来る。
 変奇館では毎年、初冬に冬ごもりの作業をすることになる。といってもご大層なものではない。

 最初にするのは牛脂を最寄りの肉屋で分けてもらうことだろうか。よくすき焼きの肉を買うとおまけに数片の牛脂を付けてくれるが、あれを一キロいただくことにしている。
 一抱えもある真っ白な牛の脂身を抱えて冷蔵庫から店員があらわれ、器用に一発で一キロ分を切り分ける。これはサービスということで無料ということになる。
 自宅に持ち帰った牛脂の塊を手頃な大きさに出刃包丁で切り分ける。それを数個、庭の木の枝にぶら下げたバード・フィーダーに入れてシジュウカラがやってくるのを待つ。適宜補充して、一冬でシジュウカラ、メジロとヒヨドリが一キロを食べ尽くす。
 一階の書斎と応接間に設えたエアコンの設定を冷房から暖房に切り換える。
 もっとも暖房は主に石油ファンヒーターを使用しているので、石油屋さんに連絡して今年も定期的に来てくれと伝える。変奇館はすべての部屋が開口部で繋がっているので暖房も冷房も甚だ非効率的だ。
 母が元気だったころから年越しの大掃除をしてくれるハウスクリーニングの係の人から電話があり、今年は何日のうかがいましょうかと問われるので、二十四日から二十六日の間ぐらいでお願いする。

 不思議なことに一年間でたまった粗大ゴミは出入りの電気屋さんが持っていって処分してくれることになっている。量販店ではなく、町の個人商店である電気屋さんなのだが、定期的なメンテナンスのときに粗大ゴミも持っていってくれるのが常態化している。独居老人にとっては、実に有難いことだ。
 一年で伸びた庭木の枝を切り戻す。冬は樹液が動いていないので選定に適しているといわれている。玄関先の笹を切り詰める。新年に新緑の葉が延びるのが楽しみなのだ。
 さて、今年の年末はこの他に、どんな作業をすればいいのだろうか、と少し考えてみる。たぶん溜まっているDVDとCDの整理をするのがいいのではないかと思いついた。
 屋根の上に登って百個近くが収穫できる柚子の実を採るのが年末最後の仕事になるだろうか。
 そんなことで、今年も暮れようとしている。