建売考

すでに触れていたかもしれないが、わが家が国立の現住所に引っ越してきたとき、南側には百二十坪ほどの敷地に二階建ての木造の山小屋風のお宅が建っていた。
 東側は私道を挟んで八十坪ほどの、なんと栗林だった。これは農業として栗の実を採取するためのもので、整然と栗の木が植えられていた。
 北側は市道を挟んで日展の彫刻家のお宅で二百坪の敷地に工場のようなアトリエと立派な茶室を含む母屋があり、拙宅に面した部分は平屋の賃貸アパートであった。
 北東側、つまり斜めお向かいは二百坪の敷地にこじんまりした木造の山小屋風母屋があるだけで、広々としていて、宮崎アニメ「トトロの森」のロケ地ではなかったかと噂されていた。

 さて、西側だが、これは引っ越してきたとき、すでに廃墟然とした工場の跡地と、驚くべきことに、廃棄されたゴルフの打ちっぱなしだった。ここもゴルフ場と工場を足すと二百坪だった。
 二百坪にこだわるのは、そもそも国立が宅地造成されたときに二百坪単位で売りに出されたからなのだ。
 わが家とお隣は先代の持ち主が百二十坪と八十坪に分割して購入したのだった。
  西側は数年前に持ち主が代わり、六棟からなる建売住宅となった。北側はすでに息子さんたちの世代となり、彼らとさらにお孫さん世代の住居として新築された。
 例のトトロのモデルとなったお宅は、お子さんたちが別のところで生活しているためか売却され、五棟からなる建売住宅となった。南側は瀟洒な洋館となり、お孫さん世代が暮らしている。

 ということで、変奇館周辺は、にわかに人口が増え、特に各家庭には、それぞれお子さんたちもいるので、なんともにぎやかなご町内ということになった。
 さて、元栗林であった東側だが、実はかなり前からモルタル二階建てのアパートになっていた。そこが去年あたりから無人になったと思っていたから、せんだって、当該住所の地主さんから委託されたという業者が来宅し、境界線確定のための測量をしたいとのことだった。おそらくは、ここもいずれ建売となるのだろう。その旨、来宅した業者に尋ねたところ、自分は測量が専門で、そのあと地主さんがどうするかまでは知らないという。