わが家の朝食(2)

山口瞳のことだから、朝食は和食だろうと思われるかもしれないが、祖母の静子、つまり瞳の母親が大変、ハイカラで、朝食は目玉焼きにトーストという人だった。
 瞳自身も、その影響か、トーストにチーズを乗せて食べるのがお気に入りだったのだ。おかげで、僕も朝食は洋食となった。

 市販のホットケーキミックスに全粒粉を半分ずつ混ぜ、それに小麦のフスマを適量加えて、ホットケーキを焼く、というスタイルが定着している。
 それにオリーブ・オイルとメイプルシロップをかけて食べるという時代が長く続いた。一昨年、昔から続けている海外のリゾートと高級ホテルを訪ねるという取材旅行でニュージーランドに行ってきた。
 同行した写真家の方が、奥さんから頼まれたというので、マヌカ・ハネーを一瓶、購入されていた。聞くところによると、マヌカはニュージーランドに自生する植物で、近年、その蜂蜜に殺菌作用があると評判になっているという。
 帰途に着く空港で、多少の小銭が残っていたので、その金額でも買える、マヌカ・ハニー風味という、一番、安いものを、一瓶購入した。
 帰国後、いつものように朝食をとっていたのだが、ちょうどメイプル・シロップが切れたので、替わりに、この安価なマヌカ・ハニーを使うことにした。

 僕は両親に似て歯が悪いのだが、月に一度はかかりつけの歯医者で歯石のチェックをしてもらっている。
 ある日、歯科医師が、山口さん、歯茎の状態がいいですね、と言う。僕に思い当たることはなかったのだが、もしやしてと、マヌカ・ハニーの殺菌力を思い出した。
 この間に日常的な変化は、メイプル・シロップをマヌカ・ハニーに変えたぐらいのものだったからだ。
 以後、メイプル・シロップの替わりにマヌカ・ハニーを使うことにした。
 ご存じのように、マヌカ・ハニーは大変高価で、含有率は政府の機関によって厳重に審査されている。僕は抗菌作用を現す公式数値であるUMF値5+のものを使っている。
 それで歯茎の状態が悪化しないで維持されているということはないのだが、なんとなく、気持の問題として、これはいいのではないかと愛用することにした。そして、味もなかなか美味しいと思っている。