第2回 小石原のやきもの・飛びかんな vol.2

 鉋(かんな)と呼ばれる簡素な道具を器の表面に当ててロクロを回し、連続模様を刻んでゆく小石原焼の代表的な加飾技法が「飛びかんな」。
 言葉での説明は難しいので、気になる方はぜひ動画検索を。「おお!これか!」と膝を打つ映像に出会えます。あっという間に美しい模様が生まれてゆく工程には、驚きを覚えることと思います。

飛びかんな

 飛びかんなの総本山である民芸陶器の里・小石原には、伝統と革新―その両輪を担う作り手(窯元)が50軒ほど。そのうち、僕がお付き合いしているのは2軒です。

飛びかんな

 『民芸陶器あるある』として耳にすることが多いのは、味わいのある重厚な器を手に入れたけれど、年を重ねるごとにその重みが耐え難くなり、今ではすっかりタンスの肥やしに…という話。
 けれど、ベテランの鬼丸豊喜さんはそんなオチとは無縁の作り手。民芸らしい伝統美は踏襲しつつ、使いやすさを重視し、あえて軽く仕上げることを心がけているからです。お皿や鉢を実際に手に取ってみると、視覚とのギャップもあり、「え、こんなに軽いの?」という感じ。

飛びかんな

 鬼丸さんの工房に伺うと、平日であるにも関わらずほぼ毎回、遠方からやってきたファンの方に出くわします。みなさん、「使いやすかったから、また買い足そう」という人たち。これって、使い手の立場を考えた制作姿勢に対する正直なレスポンスではないかと思います。

飛びかんな

 前回チラ見せした青い飛びかんなの器を作っているのは、鶴見窯の二代目・和田義弘さん。
 あの青い器は、僕が訪ねたとき、鶴見窯の棚の片隅にひっそり並べられていたもの。それを引っぱり出してきて、新作としてあらためて練り直してもらったら、よい上がりになったのです。小石原焼にはなかった色彩感覚ですが、和田さんの若々しく力強い飛びかんなには、包容力を持つこの色がよく馴染んでいると思います。実際お料理もよく映えるし、なかなかのたたずまい。

飛びかんな

 窯業地へ足を運ぶたびに思うのは、同地域に同じ手がクローンのように存在するわけではない、ということ。人の手跡は十人十色であり、その中から共感できる美意識に出会えた時の喜びはひとしおです。
 そういう醍醐味があるからこそ、工芸を巡る旅はこれからも続けてゆきたいと思っています。