第24回 笠間とスタンダード vol.4

第24回 笠間とスタンダード vol.4

前回は、「production center」などという横文字を掲げながら、窯業地・笠間のお話をしてきましたが、「production center」である笠間のさらに「center」と言えるのが、笠間芸術の森公園。
広い敷地のなかに諸々の文教施設が点在し、緑豊かな文化空間を形成しています。

公園内にある陶芸大学校は、70年前に茨城県窯業指導所としてスタートし、前々回紹介した阿部慎太朗さんのように第一線で活躍する作り手を、世に送り出してきた教育機関。これから陶芸を生業としたい人にとっては登竜門と言ってもよい場所かもしれません。

第24回 笠間とスタンダード vol.4

また、駆け足でやきものの世界に触れてみたい人向けには、陶芸美術館や陶芸体験できる工芸の丘といった文化施設が。ふらっと訪れても、笠間焼の歩みに触れたり、実際に土に触れたり、楽しい時間を過ごせることと思います。
さらに、公園の周囲にはギャラリーロードという道が延びているので、ハイキング気分で歩くのもよいかも。個性的なお店が点在しているので、お気に入りの作品に出会えるのではないでしょうか。

このあたりは、さまざまな目的の人たちが楽しめる笠間の「center of center」。空いた平日をねらって、目的の施設やお店をゆっくりと満喫するのがオツではないか、と思います。

第24回 笠間とスタンダード vol.4

笠間の窯業地としての歴史がはじまったのは18世紀後半のことですが、それよりずっと前から、この地は笠間稲荷神社の門前町として栄えていました。日本三大稲荷のひとつとされる由緒ある神社なので、笠間焼の世界を楽しんだ後に、少し足を延ばしてみるのもよいのでは。
芸術の森公園からは歩くこともできるけれど、足腰に自信のない方にはかさま周遊バスがおすすめ。およそ7分で神社に着くことができます。

第24回 笠間とスタンダード vol.4

稲荷神社と言えば、やはり稲荷寿司。僕が訪れるたびに寄ってしまうのが、門前にある二ツ木という持ち帰り専門店。くるみ入りのご飯があまーいお揚げさんでくるまれていて、ちょっとクセになる味。
昔はみんなへとへとになって参道にたどり着き、こういう甘いお稲荷さんを頬張って疲れを癒したんだろうな、と勝手に妄想。他の地方の寺社の門前には、必ずお団子や甘味のお店があるわけで、それと同じ感覚なのかな。お稲荷さんを供するところが笠間ならでは、という感じ。なんだかうれしいですね。

第24回 笠間とスタンダード vol.4

食いしん坊ついで(?)に、もうひとつ食べ物の話。
水戸線の笠間駅前にはグリュイエールという洋菓子店があるのですが、こちらは持ち帰りだけではなくカフェも併設。日帰り旅の締めくくりに、このお店で美味しいモンブランをいただきながら帰りの電車を待つのが、僕のひそかな楽しみだったりします。実は、栗も笠間の名産品なのですよ。
丸一日、歩いたり、見たり、作ったり、食べたり。そうやって自分の足で産地をめぐってみると、ほんの少しだけ作り手たちが住む世界に近づけるような気がしてきます。

[付記(2020年4月8日)]
笠間芸術の森公園では、毎年ゴールデンウィークに「陶炎祭(ひまつり)」という陶器市が開催されるのですが、今年はコロナウィルスの感染拡大に伴い、延期になりました。
残念な気持ちもありますが、まずは安全が第一。早く事態が収束し、心おきなく陶炎祭が開けることを心から願っています。