まあ、この業界、リーマンショック以後、きびしいものがあります。古いモノを探してきて売るというのは、ことに大きな家具が、なかなか売れないんですよ。大震災後は、とくに。それで、何か違うことを考えないと、と思っていたんですよ。一昨年が、ぼくの転機でした。…… 商売で扱うモノが家具である、ガラスである、ということから、住空間の中で、ぼくがやれることは何かと考えた。前から、ステンドグラスをつくりながら、日本の木の空間に、鉛のフレームでつくったステンドグラスというのは、内心、違和感を感じていたんですよ。“木製のステンドグラス”って、できないかなあって。ずっと考えていたんですよ。
それで、やってみると、つくっていて楽しかった。よし、じゃあ、カジをきって、木製のステンドグラスという観点で、木製建具をやろうかな、と思い始めたんですよ。ある人は「お前、もとのところへ戻るんだね」といったけど、ちょっと違いはあるにしろ、自分のやっていたことへの回帰だと思いましたね。道具の仕事にも、創造性は必要ですけど、一からデザイン描いてつくるのは、まったく違う楽しさがあります。
さて、そうしてつくると、今度は曲線がほしいなと思ったんです。それで、曲線を入れてつくってみたんですよ。丸い“木製のステンドグラス”をつくってみたいと、つくったんですよ。そのつぎに、これをどんどん進化させて、おもしろい建具をつくってやろうと思って、スライディング・ドアがあるなら、転がる建具、ローリング・ウインドウはどうかな、と思ったんです。敷居と鴨居の間をグルグル回転して、ピタッと、こちら側におさまる、と。建具を楽しんでもらいたいんですよ。
ローリングの丸いワッカも、何でやろうかと考えていて、ああ、オフクロが、昔、使っていた “刺しゅうのワッカ” だと。あっちの曲げもの屋さん、こっちの木地屋さん、…… 輪島だ、飛騨高山だ、木曽福島だと、楽しんで歩いたものでした。