店にいらしたお客さんに、ぴったりつくと、お客さんは、ウットーしがるものですよ。この業種は、とくに、ね。ウチは「何かわからないことがあったら、聞いてください」で、オワリ。「コレ」っていわれたら「ハイ」。「まかりますか？」といわれたら「ちょっとは、まかります」と。そんなカンジです。ぼくらより、よく知っている人も、きますよ。参りますよ。外国人でも、ぼくより、タンスのこと知っている人もきますよ。そういう人、好きで勉強している。タンスについての英語の本、たくさん出ているんですよ。びっくりしますよ。勉強しているから、店のタンスを見て「コレハ、新潟ノ、チョット山形ヨリノ、タンスデスネ」とかいいますよ。

座間の米軍の方のお宅へ配達に行ったとき、驚きましたよ。古い日本の家屋を借りて住んでるんですが、玄関を入った途端、デカイ、見たこともないような神棚が飾ってありましてね。ちょっと、日本人でも、あれだけ精通している人はいないくらいでした。まさしく外国人的センスで、テーブル代わりに、100万じゃあ買えないような船ダンスだったり。長火鉢に草が植えてあったり。長火鉢の中に、ウィスキーとかジンとかトニックウォーターとかいれて、カクテルテーブルにしたいからって、いわれたことありますよ。そういっちゃいけないけど、かないませんよ。ちょっと間違ったことをいうと「マチガツテマスネ」といわれたりしてね。

…… あ、ここにあるラクダはね、冨岡八幡で毎週やっている古道具の露店で買いました。昔、ラクダのシャツってあったでしょう。それをつくっていた店の看板だと思います。古いんですよ。金箔を張ってあって。……
朝一番に行ったら、業者の仲間が「駱駝さん、ラクダがあるよ」って。買おうとは思わないで、そこへ行ってみたら、「コレ、なかなか売れなくてねえ」と。ぼくは、すぐ、買いましたよ。その年の正月の最初の買い物でしたね。