もう、26年前の話です。そのころ、ぼくはアメリカから帰って、仕事を探していたんです。オートバイで、吉祥寺の、当時あった近鉄百貨店へ行き、バーッと中に入ったら、そこに、ステンドグラスのコーナーがあった。ぼく、向こうにいたとき、アパートの隣の部屋にいたアメリカ人が、お兄さんの誕生日にと、ステンドグラスをつくっていたんですよ。一緒にメシを食ったとき、話を聞いたりして、多少、ステンドグラスの知識はあった。それで、その店で「すみません。ココ、バイトいりませんか」と、突然、いってしまったんです。そしたら「あさって履歴書を持ってきてください」といわれ、面接して、入社。トレーニングをして、やがて、店長になったんですよ。
デパートの文化教室で、生徒さん、70~80人いたかなあ。生徒さんのほうが、よく知っていたりするので困ったなあ、とみんなが帰ったあとで勉強したりして、やりこなしていましたが、何年かたって、デパートの店を撤退することになりました。そのとき、不動産屋さんから「昭和5年の建物ですけど、借りて商売してみませんか」といわれましてね。趣味として、古道具を市場へ買いに行ったりしていたので、よし、店を始めよう、と。思いつきです。ぼく、たいてい思いつきなんです。それでココで、ステンドグラスの工房と教室、それと古道具屋と2足のわらじをはくことに・・・。
ところが、あるとき、江戸時代からお医者さまをなさっているというお宅のステンドグラスの仕事がきた。ほらよく、ヨーロッパの教会にある、キリストさまの顔が入っている・・・あれ、ペインティングといって、1枚1枚描き、電気炉で焼く。焼いては、急激に冷やすと割れるので、1日かけて冷やす。全部で、2カ月くらいかかりました。店を開けてはいるんですが、仕入れも接客もできない。2足のわらじはムリかなあと、道具屋1本にしたんです。