- 設計:田中敏溥
- 施工:安池建設工業
- 薪ストーブ:ヨツールF162

「夕方仕事を終えると、まず火を灯します。薄暗くなる部屋の中、炎が踊るのを見ていると時間が経つのを忘れてしまう」。こう語るのは、画家の瀬川智貴さん。瀬川さん夫妻は、双方の母親と同居するのを機に都心から緑豊かな鎌倉に引っ越してきた。設計を依頼したのは、田中敏溥さん。智貴さんが憧れる名建築”軽井沢の山荘”を手掛けた吉村順三さんの系譜にあたる藝大出身の建築家だ。
「生火は最初から欲しかったんです。”軽井沢の山荘”にも暖炉がありましたし」と智貴さん。ただ、暖房機能はパッシブソーラーシステムを、キッチンもプロ仕様のコンロを入れると決めていたので、生火は純粋に”眺めるもの”として考えていたという。暖炉は入れてもあまり使わないことが多いよ、という田中さんのアドバイスもあり、薪ストーブを選択。大雪の日にその暖かさを初めて実感し、それ以上に炎に魅せられ、思わずテレビを消したそうだ。
薪ストーブを設置したのは2階リビングのコーナー。「火と暮れなずむ景色を眺めながら飲む酒は、格別。朝は鳥の声で目覚め、リビングの窓を開ければ手すりをリスのつがいが走っている。毎日が別荘気分ですよ」と、智貴さんが笑いながら語る。「この家でいちばん楽しんでいるのは、僕かな。やっぱり男は火をつけるのが好きな生き物(笑)。娘は火の前で玩具を広げるけれど、僕にとって火そのものが極上の玩具のようなものなんです」



炎を楽しむ家
- 火を熾す手間から、豊かな”いい時間”が生まれる
- 日暮れから始まる、炎と戯れる魅惑のひととき
- 暖炉の生きた火を、親子で静かに楽しむ時間
- 薪づくりから満喫、炎に親しむ豊かな暮らし
- 料理に薪風呂、炎が支える手づくりの暮らし
- 四世代の家族を結ぶ、「火場」のもつ力
- 緑や光と同様、火は暮らしを豊かにする
- 生活のなかで体験する、直火のリアリティ
- 懐かしさ溢れる土間で楽しむ、炎という贅沢
- 都会の暮らしを豊かに彩る、炎のゆらめき
- 森の家で味わう、火のある安らぎの時間
- 炎の揺らめきが蘇らせる、大切な家族の記憶
- 家族の時間をやさしく包む、炎のぬくもり
- 宴の”おもてなし”は、炎とストーブ料理