- 設計:小井田康和、川島千晶(フリーハンド:小井田設計室)
- 施工:本間建設
- 暖炉デザイン:川島千晶

9年前に横浜市の住宅街に家を建てたIさん一家。設計は小住宅の名手として知られた故・小井田康和さんと川島千晶さん。当初は夫婦二人暮らしだったが、やがて2人のお子さんが生まれ、暖炉があればと思うようになったそうだ。「暖炉への憧れは、小井田さんの山荘に招かれ、暖炉の火を眺めながら一緒にお酒を飲んだ思い出によるのかもしれません」と、ご主人。「キャンプで焚き火を楽しんでいたけれど、季節が限られてしまう。子どもたちには危ないことも含めて、生きた火の扱い・楽しみ方を伝えたくて」と、奥さんも暖炉への想いを語る。
夫妻は再び川島さんを訪ね、後付けで暖炉を施工する計画を練る。リビング・ダイニングの居場所のバランスが崩れないよう、煙突の配置なども熟慮して、構想5年目にしてようやく念願の暖炉を迎え入れたのだった。暖炉を設置したのはリビングの中心。普通ならテレビを置くであろう位置にレンガづくりの暖炉が座す。
「見て、赤いのがついたよ!」。この冬はじめての暖炉の火入れに大よろこびのお子さんたち。「火がついたら枝をはなすんだよ」と、隣で見守るご主人。木のはぜる音が親子の会話に入り混じる。暖炉は家全体を暖めることはできない。しかし、暖炉でしか味わえない、炎の表情がある。亡き小井田さんが教えてくれた火のある豊かな時間は、さらに親から子へと受け継がれていく。


炎を楽しむ家
- 火を熾す手間から、豊かな”いい時間”が生まれる
- 日暮れから始まる、炎と戯れる魅惑のひととき
- 暖炉の生きた火を、親子で静かに楽しむ時間
- 薪づくりから満喫、炎に親しむ豊かな暮らし
- 料理に薪風呂、炎が支える手づくりの暮らし
- 四世代の家族を結ぶ、「火場」のもつ力
- 緑や光と同様、火は暮らしを豊かにする
- 生活のなかで体験する、直火のリアリティ
- 懐かしさ溢れる土間で楽しむ、炎という贅沢
- 都会の暮らしを豊かに彩る、炎のゆらめき
- 森の家で味わう、火のある安らぎの時間
- 炎の揺らめきが蘇らせる、大切な家族の記憶
- 家族の時間をやさしく包む、炎のぬくもり
- 宴の”おもてなし”は、炎とストーブ料理