- 設計:連合設計社市谷建築事務所
- 施工:木ごころ・坂田工務店
- 薪ストーブ:ヨツール/F400

山裾の緩斜面に佇む今井邸は、山小屋を思わせる板張りの平屋建て。飼っている白いヤギたちが家のまわりで草を食む姿は、まるでアルプスさながらの光景だ。「アルプスの少女ハイジのように暮らすのが夢だったんです」と、奥さん。「夏はヤギを連れて山を歩き、冬は暖炉の前で家の細々とした仕事をする。何もないところでも自分たちの力で生きていく、そんなハイジたちのたくましさに憧れました」
今井さん一家の暮らしも、手づくりが中心。食材は家の前に広がる田畑の収穫物を使い、ヤギのミルクでチーズやヨーグルトまでつくる。そして、冬に一家を暖かく見守ってくれるのが、薪ストーブだ。キッチン・ダイニングに面した土間にどっしりと据えられた薪ストーブが、なんとも頼もしい。今井家の人びとは誰もが薪づくりや火の扱いには慣れている。なぜなら、昔から薪で風呂を焚いてきたから……新しいこの家の風呂も、もちろん、薪風呂だ。ガスとは暖まり方がまるで違うという。
友人・知人が集まって手づくりパーティを開くのも一家の楽しみだ。この日も料理好きの娘さんを中心に、友人たちも参加して、おいしそうな料理が手際よくつくられていく。もちろん、薪ストーブは煮込み料理やピザづくりに大活躍。「自然の中でハイジみたいに暮らす、そんな長年の夢がかなって幸せです」と、薪ストーブの上で暖められる鍋を覗き込みながら、奥さんが少女のような笑顔で語ってくれた。


炎を楽しむ家
- 火を熾す手間から、豊かな”いい時間”が生まれる
- 日暮れから始まる、炎と戯れる魅惑のひととき
- 暖炉の生きた火を、親子で静かに楽しむ時間
- 薪づくりから満喫、炎に親しむ豊かな暮らし
- 料理に薪風呂、炎が支える手づくりの暮らし
- 四世代の家族を結ぶ、「火場」のもつ力
- 緑や光と同様、火は暮らしを豊かにする
- 生活のなかで体験する、直火のリアリティ
- 懐かしさ溢れる土間で楽しむ、炎という贅沢
- 都会の暮らしを豊かに彩る、炎のゆらめき
- 森の家で味わう、火のある安らぎの時間
- 炎の揺らめきが蘇らせる、大切な家族の記憶
- 家族の時間をやさしく包む、炎のぬくもり
- 宴の”おもてなし”は、炎とストーブ料理