- 設計:大野正博(DON工房一級建築士事務所)
- 施工:大畑工務店
- 薪ストーブ:スキャンCI-1GSCB

中庭を囲むように居室が並ぶA邸は平屋建てのコートハウス。玄関を入ると広い土間があり、その奧に佇む薪ストーブの炎が訪れる者をあたたかく迎えてくれる。薪ストーブはリビングやダイニングまわりに入れることが多いが、この家ではあえて土間に設置している。「だって、薪や火はおとなしい部屋内よりも、土間の方が似合うじゃない」と言うのは、この家を設計した大野正博さん。「ストーブのまわりって汚れるんですよ。灰を始末する時や、薪を運ぶだけでも木っ端が落ちるから、土間で正解でした」と、ご主人がうなずく。
薪ストーブはご主人のたっての希望だった。学生時代に留学したアメリカ東部の家ではじめて暖炉と出会い、スイッチひとつで暖かくなれるこの時代に、手間ひまかけて火を熾すということがとても贅沢で素敵なことに感じられ、それ以来ずっと憧れていたのだ。土間にはご主人が大切にする帆船模型や自転車が飾られ、ちょっとした趣味室のようになっている。かつての農家の土間のように、来客が気軽に立ち寄っていけるざっくばらんな場所としても重宝しているそうだ。「土間も火も、どこか懐かしさが感じられていいですね」と奥さん。薪ストーブで煮込んだ料理の味もまた格別だという。


炎を楽しむ家
- 火を熾す手間から、豊かな”いい時間”が生まれる
- 日暮れから始まる、炎と戯れる魅惑のひととき
- 暖炉の生きた火を、親子で静かに楽しむ時間
- 薪づくりから満喫、炎に親しむ豊かな暮らし
- 料理に薪風呂、炎が支える手づくりの暮らし
- 四世代の家族を結ぶ、「火場」のもつ力
- 緑や光と同様、火は暮らしを豊かにする
- 生活のなかで体験する、直火のリアリティ
- 懐かしさ溢れる土間で楽しむ、炎という贅沢
- 都会の暮らしを豊かに彩る、炎のゆらめき
- 森の家で味わう、火のある安らぎの時間
- 炎の揺らめきが蘇らせる、大切な家族の記憶
- 家族の時間をやさしく包む、炎のぬくもり
- 宴の”おもてなし”は、炎とストーブ料理