
家族室の壁面にテレビと並んで設置された薪ストーブ。「団らん時に同じ方向を見られるように」(設計:田中さん)考えられている。
独身時代からバーベキューやホームパーティが好きだったという喜多さん夫妻。結婚を機に建てた新居も「友人が集まって憩える家」を目指したという。大きな掘り炬燵とともに家族室(リビング兼ダイニング)に設置したのが、クッキングストーブ(オーブンを備えた薪ストーブ)だ。
とある週末、仲のよい友人たちが集まり昼食の準備で賑やかな喜多邸。この日のメインはクッキングストーブでつくる料理で、天板のタジン鍋でパエリアがふつふつと音を立て、下部のオーブンでは豚肉のブルーベリー焼きが甘い香りを漂わせている。「どうすれば思いどおりの温度になるのか考えたり、なかなかうまくいかないところがおもしろい」と、火の様子をのぞきながら話す奥さん。
「火を熾すところから始まるから、食べるまでの過程も楽しい」とご主人が続ける。竣工したばかりの家で、ストーブに火を入れるのはまだ数えるほどと聞いていたが、夫妻はすっかりその魅力にはまっているようだ。
お昼過ぎ、宴が始まった。できたてのストーブ料理をほお張るかたわらで、薪がはぜる音、ゆれる炎、薪が燃える香ばしい匂い……それらも贅沢なごちそうになっていた。薪ストーブという” おもてなし” を傍らに、みんなの楽しそうな会話や笑い声が、いつまでも聞こえていた。
![]() |
![]() |
![]() |
上部ボックスが火室、下部ボックスがオーブンになったクッキングストーブで料理を楽しむ。 | 薪ストーブはピキャンオーブン。 炉台や炉壁には大谷石を用いている。 |

月に2、3回はこうして友人を招いて食事やお酒を楽しんでいるそうだ。
炎を楽しむ家
- 火を熾す手間から、豊かな”いい時間”が生まれる
- 日暮れから始まる、炎と戯れる魅惑のひととき
- 暖炉の生きた火を、親子で静かに楽しむ時間
- 薪づくりから満喫、炎に親しむ豊かな暮らし
- 料理に薪風呂、炎が支える手づくりの暮らし
- 四世代の家族を結ぶ、「火場」のもつ力
- 緑や光と同様、火は暮らしを豊かにする
- 生活のなかで体験する、直火のリアリティ
- 懐かしさ溢れる土間で楽しむ、炎という贅沢
- 都会の暮らしを豊かに彩る、炎のゆらめき
- 森の家で味わう、火のある安らぎの時間
- 炎の揺らめきが蘇らせる、大切な家族の記憶
- 家族の時間をやさしく包む、炎のぬくもり
- 宴の”おもてなし”は、炎とストーブ料理