杉の伐採現場。木は家づくりの材として多くのすぐれた特性をもつ。年輪の中心部の赤い部分が心材、その周辺の白い部分が辺材。

杉の伐採現場。木は家づくりの材として多くのすぐれた特性をもつ。年輪の中心部の赤い部分が心材、その周辺の白い部分が辺材。

 

●木は伸び縮みする

山から伐り出されたばかりの木には、たくさんの水分が含まれています。それを、木材として家づくりに使用するには、十分な乾燥が必要です。昔ながらの天然乾燥が理想とされますが、近年では乾燥室で人工的に乾燥させることが多くなっています。
 木材は乾燥すると縮み、水分を吸収すると伸びる傾向があります。乾燥が不十分な木材で家を建ててしまうと、木材が乾燥するにつれて縮みや割れを生じることもあるので、注意が必要です。また、木には適切な伐採時期(切り旬という)があることも知っておきましょう。春から夏は根から水分や養分を吸収する時期なので、この時期に伐採するとカビや虫害に侵されやすいのです。木の活動が停止する秋から冬の「切り旬」に伐った木のほうが、木材には適しているといえます。

 

●木材になっても呼吸している

木は伐採しても生き続け、周囲の湿度に反応して湿気を吸い込んだり吐き出したりしています。木の水分がある温度と湿度のもとでつり合うと木材は安定します(平衡含水率という)。地域や季節によっても異なりますが、温度20度、湿度75%の場合、含水率は15%で安定します。平衡状態にある木材は、梅雨時には湿度を吸収し、冬の乾燥時には細胞内の水分を放出し、湿度を調整してくれるのです。

 

●木は腐りやすい?

木を腐らせる腐朽菌はキノコの仲間で、適当な温度、水分、酸素、栄養分がなければ生きていけません。温度や酸素はコントロールしにくいものですし、木そのものが栄養分なので、これを排除することはできません。ただ、水分だけは比較的コントロールが容易です。水分が浸み込まない工夫と、湿度を低く保つ工夫が必要です。
 また、木には腐りやすい木と腐りにくい木があります。地面に近い土台には腐りにくい木を使うなど、適材適所を守ることが大切です。さらに、木は年輪の中心部を心材(赤身)といい、外側を辺材(白太)といいます。辺材は栄養物を蓄える柔細胞が活動しているため水分と養分が多く、心材はすでに細胞が活動を終え固定化しています。心材が辺材に比べて腐りにくく虫がつきにくいのは、このためです。腐りにくい材種であっても、心材を使うことが基本です。

 

●木は熱を伝えにくい

木に触るとほんのり温かく感じた経験は誰にでもあるでしょう。これは木材には熱を伝えにくい性質があるからです。同じ厚さの木材とコンクリートを比べると、コンクリートは木材の5倍も熱を伝えやすく、このため寒いときには冷たく、暑い時には熱くなりやすいのです。
 さらに、木の細胞は隙間にたくさんの空気を含んだ構造になっているので、急に熱くなったり冷えたりすることもありません。とくに厚みのある木は断熱性も高くなります。厚板の床が心地よいのはこのためでもあります。