シロアリ

ヤマトシロアリのライフサイクル。コロニーでは王と女王が中心となり、全体の95%を占める職蟻がエサの運搬や王・女王の世話、巣づくりや清掃を、兵蟻が外的から巣を守る。毎年3~5月になると羽アリが群飛し、羽を落とした落翅(らくし)虫が対になって新しい巣をつくる。

「木の家」は「第2の森林」

シロアリは「木の家」の大敵です。阪神・淡路大震災で倒壊した「木の家」を調べてみると、その多くでシロアリによる食害が確認されたそうです。

シロアリは熱帯性の昆虫で、森林の枯死木を分解して土壌に還す働きをするため、生態系全体から見ると益虫と言うこともできます。ところが、シロアリの主な活動場所だった森林が減少したことにより、私たちの大切な木の家がシロアリにとっての「第2の森林」となってしまったのです。シロアリは枯死木と「木の家」を区別することができません。また、地球温暖化や交通網の整備発達のため、シロアリの分布はどんどん北上し、被害が拡大しています。

土壌性シロアリと乾材シロアリ

シロアリ対策を考えるには、まずはその生態を知ることが重要です。日本で「木の家」に被害を与える主なシロアリは、土壌性シロアリのヤマトシロアリとイエシロアリ、乾材シロアリのアメリカカンザイシロアリとダイコクシロアリの4種類です。

シロアリに食害されスカスカになった構造材。土壌性シロアリにとって水分はとても重要で、土の中から蟻道(ぎどう)と呼ばれるトンネルをのばして水を運び、木材に加害します。一方、乾材シロアリは木材に含まれるわずかな水分で生きられるため、輸入家具等によって運び込まれたり、羽アリが飛来して小屋裏などに上がります。土壌性シロアリとは侵入経路が異なるので同じ措置では防ぐことができません。

以下、シロアリの種別ごとに特徴と対策を見てみましょう。

ヤマトシロアリ

ヤマトシロアリの職蟻(上)と兵蟻(下)。特 徴:北海道北部や高地を除く全国に分布します(図1)。かつての日本家屋では、湿気さえなければ大きな被害となりにくかったのですが、連続基礎の採用やコンクリートの多用、木材の密閉化等で被害が深刻化しました。分散型のシロアリなので、集団は大きくならず、個体数も数百から数万、行動範囲は最大でも数メートルです(図2)。

対 策:毎年5月のツツジの咲く頃、特に雨上がりの昼間に黒い羽アリが大量に出るなら、ヤマトシロアリが生息していることを示します。分散型の集団なので個別に駆除した後、床下に蟻道等がないか定期的に点検することで対応できます。

イエシロアリ

イエシロアリの職蟻(上)と兵蟻(下)特 徴:世界で最も加害力のあるシロアリで、短期間で建物を崩壊させることもあります。生息域は大まかに言えば黒潮に面する沿海部(図1)。ヤマトシロアリと正反対の中央集権型のシロアリで、集団は強大になることで生き残ろうとするので、ひとつの集団が100万の個体になったり、活動範囲も100メートルに達することがあります(図2)。

対 策:毎年6月のあじさいの咲く頃の主に夕方に、薄茶色の羽アリが大量に見られるなら、付近にイエシロアリの集団が生息することを示します。何よりも巣の探知が基本となり、巣が把握できたら適切な薬剤処理により駆除できます。九州や中国地方には戦前からの伝統的な駆除方法があり、そうした技術者を探し出して相談してみるのもよいでしょう。

乾材シロアリ

アメリカカンザイシロアリの職蟻(上)と兵蟻(下)特 徴:アメリカカンザイシロアリとダイコクシロアリは、日本各地に点在し、徐々に被害を拡大しています。木材や家具などの移動によって持ち込まれることが多く、超分散型のシロアリなので、同一木材に多数の集団ができ、数匹から1000前後の個体で集団を形成します。

対 策:もっとも効果的な対策は持ち込まないこと。外国から木材製品を持ち込む際には注意が必要です。侵入してしまった場合、長期に渡る駆除と点検が必要になります。燻蒸処理が可能な環境であれば一挙に駆除できますが、予防効果はありません。

 

シロアリ

 

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