左/美しい模様の唐紙で仕上げた縁なし襖。 右/瓢箪をあしらった趣のある引手金物。

左/美しい模様の唐紙で仕上げた縁なし襖。右/瓢箪をあしらった趣のある引手金物。

襖の魅力

襖は障子と並び、伝統的な「和」の建具の代表格です。襖の歴史は明かり障子よりも古く、平安時代中頃には、屏風を柱間に嵌め込んだ今日の襖の原形が登場しています。日本人の住空間に対する意識の原点には、ひとつながりの広い空間があり、軽い襖はそれを仮に仕切ることのできる都合のよい建具として発展してきました。

空間に彩りを添えることができるのも襖の魅力です。木や土などの自然素材で仕上げた地味な色彩の室内にアクセントが欲しい場合など、思い切った色や文様の襖紙を使うことで、空間を豊かに演出することができます。

小さな家でも、ひとつがなりの空間を引き戸で仕切れるようにしておけば、空間を有効利用できます(引き戸を壁に引き込めるようにすれば、より開放感が味わえます)。この場合、建具は目隠しでありさえすればよいので、襖で十分です。襖は襖紙の扱い方ひとつで大壁づくりのシンプルモダンな空間にもよく似合います。和室はもちろん、それ以外の空間にも、襖を積極的に使ってみてはいかがでしょう。

襖

襖の構成と種類

図1/本襖の各部名称

襖は建具職ではなく、紙張りのプロである表具師がつくる建具です。伝統的なつくりの本襖は、木の骨格の上に数回の下張りを重ね、仕上げに襖紙を上張りします(図1)。下張りは3回程度が普通ですが、9回にも及ぶ高級な襖もあります。下張りでは、半紙大に切った紙の四周にだけ糊をつけ、紙を浮かせるように張る袋張りと呼ばれるつくりが欠かせません。紙の収縮に備え、張りとやわらか味のある仕上がりにするためです。紙張りの後に縁と引手を取り付けて完成となりますが、紙の張り替えに備え、本襖の縁は外れるような仕組みになっています。

近頃では手間のかかる下張りを省略するために、合板フラッシュや段ボール、発泡スチロールなどを下地とした量産襖が普及していますが、本襖のようなふっくらとした表情が出ず、軽さの点でも本襖にはかないません。

図2/形状による襖の主な種類

縁つき襖   : もっとも一般的な形状の襖。上張りには「鳥の子」と呼ばれる越前和紙がよく使われるが、布を張ることもある。
縁なし襖   : 縁をつけない襖は太鼓張り襖、坊主襖などと呼ばれる。茶室などの数寄屋建築に使われることが多い。
源氏襖    : 襖の一部に障子を組み込んだもの。中廊下の採光が不足する場合などに、和室との境の襖に使われる。
源氏襖(腰襖): 源氏襖の一種で、襖の幅いっぱいに障子を組み込んだものを特に腰襖と呼ぶ。

図3/張り方による襖の主な種類

腰張り    : 上下で紙を張り分けたもの。襖の幅が広く通常サイズの紙では間に合わないとき、紙を横使いして張る場合にも用いられる。
帯張り    : 紙が汚れやすい引手の部分に別の紙を横に張ったもの。引手のまわりに小さく別の紙を張る「引手張り」もある。
袖張り    : 帯張りと同じ理由から引手の側に縦に別の紙を張ったもの。腰張りと同様、紙の寸法調整にも使える。
細工張り   : 小さく切った複数枚の紙を使った張り方。市松以外では、紙の重ね目を菱形模様などに見せる張り方もある。

襖の引手金物

引手金物は、古来よりさまざまなデザインのものがつくられ、襖紙と合わせて風情や遊び心を楽しむことができます。安価な金物の多くは金属板をプレス加工した大量生産品で、粗悪なものになると数年で塗装がみすぼらしく剥げ落ちることもあります。熟達の職人が真鍮などを用いてパーツごとに組み立てるような金物は、値段も安くありませんが、時とともに味わいを増します。
左より素銅五郎三・光琳梅、銀古美・唐草玉子、赤銅千鳥、くすべ・瓢箪

 

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