シロアリが嫌いな家のイメージ

■体力のある家は「薬」に頼らない

シロアリ防除に大量の薬剤を使うことは、健康にも環境にも好ましいことではありません。かつて広く用いられていた有機リン系の薬剤クロルピリホスも、2003年の建築基準法改正で使用が禁止されました。その後、ヒバ油や木酢液、ヤシや月桃(沖縄から九州南部に分布するショウガ科の多年草)の抽出物を用いた薬剤なども用いられるようになり、シロアリ防除もレス・ケミカル、ノン・ケミカルの方向に移りつつあります。

しかし、自然抽出物であれ化合物であれ、薬剤に頼りきったシロアリ対策はあくまでも一時しのぎに過ぎません。本当の意味でのシロアリ対策は、シロアリに強い家をつくることです。シロアリが侵入しづらいつくりはもちろん、高耐蟻性の樹種を使うなど、複合的に考える必要があります。そして、何より頑丈な基礎や太く丈夫な構造材、床下の通気など、家としての基礎体力を高めることが必要不可欠です。シロアリに強い家は、地震や台風にも強く、長く住み継ぐことのできる家でもあります。

■床下の通気と乾燥がポイント

ヤマトシロアリやイエシロアリは、ほとんどの場合、床下から侵入しますので、床下にどれだけ気を配れるかが重要です。シロアリは光と風を嫌い、暖かく湿気の多い環境を好みます。床下の通気と乾燥を確保することが、有効なシロアリ対策となります。具体的なポイントをまとめましたので、家づくりの参考にしてください。

基 礎:通常、布基礎よりベタ基礎(土壌面にもコンクリートを打設する)の方がシロアリは侵入しづらいとされる(土壌面を塞ぐのは逆によくないという考え方もある)(図1)。基礎の内部を地面より高くして雨水が流れ込まないようにする。コンクリートは打ち継ぎせず、一体打ちとすることで継ぎ目からのシロアリの侵入を防ぐ(配管まわりの隙間に要注意)。

通 風:基礎パッキン(基礎と土台の間に挟むゴム製の部材)を用いて床下に風の流れを確保する。通気口を設ける場合は、その土地の風の流れに逆らわない配置とする(図2)。通気口のまわりに鉢やブロックなどの障害物を置かない。

調 湿:炭などの調湿材を床下に敷き込むことで、滞留する湿気を吸収させる。

バリア:粉砕した玄武岩やステンレスメッシュを土壌の上に敷設し、その上にコンクリートを打つ。基礎と土台の間に蟻返し(図3)を設置することは点検用としても有効。
 
シロアリ対策のポイント

壁:壁の内部結露を防ぎ、モルタルの剥がれに注意する。発泡ポリスチレン系の断熱材は食害を受けやすいので、通気層を設ける断熱方法がシロアリ対策には効果的。

木 材:辺材部は食害されやすいので、芯持ち材、それもなるべく高樹齢のものを使う(年輪の晩材部分は堅いので食害されにくい)(図4)。檜やヒバは食害されにくい。特に、ヒバの成分ヒノキチオールには殺蟻効果がある。

メンテナンス:床下に木くずやゴミを放置せず、清潔な状態を保つ。床下にもぐれるほどの高さ(50センチ以上が理想)を確保する。電気や水道などの配管が点検の邪魔にならないようにしておく。年に1~2度は床下にもぐってメンテナンスをする(図5)。
 
シロアリ対策のポイント
 

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