自然を眺めながらの入浴は格別。ハーフユニットバスを用い、腰から上は板張りとしている。(設計/大野正博)

「浴室」づくり・8つのポイント(後編)

前回1~3に続き、心地よいお風呂をつくるためのポイントをチェックしましょう。

4:換気は効率よく
 浴室の換気の重要性は誰もが心得ていることでしょう。入浴後(夏なら入浴中も)に十分な換気を行うことは、カビの発生を防ぎ、木や石などの自然素材を長持ちさせることにもつながります。

風通しのよい浴室にするためには、換気扇と窓の配置に配慮が必要です。暖められた空気は上に上がっていくので、換気扇は高めの位置に取り付けます。また、基本的に窓と換気扇は離したほうが換気効率が高まります。換気扇から排出された分、同時にどこかから空気を取り入れる必要がありますが、換気扇と窓が近いと空気は小さい範囲をぐるぐる回るだけなのに対し、換気扇と窓が離れていると浴室内で大きな空気の循環が生じるため、効率よく換気を行うことができるのです。

縦長のジャロジー窓を設置するのもよいでしょう。暖まった空気を上から逃がし、同時に下から外気を取り込むことができるため、この窓ひとつで効率よく空気を循環させることができます。壊しても人が侵入できない程度の細長いものがおすすめです。

縦長のジャロジー窓 窓の上から暖かい空気を放出し、下から冷たい外気を取り込むことができる縦長の窓は、ひとつの窓で効率よく換気が行える。  

5:防水はしっかりと
 浴室で腐りやすいのは、水が降りてたまる壁の腰から下の部分です。ここから建物内部に入り込んだ湿気を内部の木材が吸い、腐朽の原因になるばかりか、シロアリの被害にもつながりかねません。

木造住宅では特に、建物を傷めないためにもしっかりした防水が必要です。腰の高さまで鉄筋コンクリートの基礎を立ち上げたり(増改築ではコンクリートブロックを用いることもある)、FRP(Fiber Reinforced Plastic:ガラス繊維をプラスチックで閉じ込めた繊維強化プラスチックのこと)防水を施すなどが一般的な手法です。

ユニットバスはFRP防水が施された商品で、言ってみれば船をつくって浴槽を置いたような状態で水は排水口からしか漏れません。ユニットバスを用いるなら、床から腰までの立ち上がりにFRP防水が施されたハーフユニットバスを用いるのもよいでしょう。2階に浴室を設ける場合も安心ですし、壁や天井、ドアを自由にデザインできるのも魅力です。

6:浴室の安全性
 水がかりを防ぐため、浴室は脱衣室から150ミリほど下げて段差を設けると安心です。しかし、人は床に降りるとき「すり足」のことが多く、濡れていれば滑る危険性も高くなります。そこで、あえて段差を「またがせる」つくりにするのもおすすめです。人は何かをまたぐとき、足を上げてその向こうにしっかりと置くもの。またいだ足が滑る可能性は低くなります。

車いすを使う場合は脱衣室と浴室に段差のない、平たいつくりにします。浴室には建具のそばに排水溝を設けるなど、脱衣室に水が入らないよう配慮が必要です。ドアの場合は、万が一入浴中に倒れたときに備えて脱衣室側に開くようにしましょう。浴室側に開くドアだと、倒れた本人がドアを塞いでしまう可能性があるからです。

手すりの位置は、それが必要な本人でないと厳密には分からないものです。壁を木でつくっておけば、浴室完成後に思い通りの位置に設置することが可能です。

浴室入口の段差 「またがせる」段差を設けることで、濡れた浴室に入る際に滑る危険を減少できる。わずかな段差だとつまずく危険があるので、しっかり認識できる程度の高さにする。  
脱衣室の水がかりを防ぐドアの工夫 左/ドア自体に小さな溝を設けることで水を切る。 右/敷居に「水返し」を設ける。5㎜程度でも効果がある。

7:コストの考え方
 浴室まわりの施工は、防水も含めてしっかりとしたつくりにしましょう。ローコストにこだわった結果、土台や柱が傷んでしまえば、後々大きなコストがかかることになります。例えば、割高に思われる断熱性に優れた窓を入れても、エネルギーコストを考えれば1、2年で回収できる価格差なのです。また、施工自体のコストを抑えるという意味では、防水工事が不要なハーフユニットバスを使い、壁などは好みの木材で仕上げるのもおすすめです。

8:日頃の心がけ
 入浴後に窓を開ける、最後に入浴した人が脱衣室のマットを上げておくなど、日頃のちょっとした心がけの積み重ねで浴室も建物も長持ちします。面倒がらず、できることはこまめに行う習慣をつけるようにしましょう。