店を始めようと思い立ってから、1年くらい、場所を探しましたね。売れる店、というのは想像できなかったから、家賃もギリギリライン。何件も見て歩いて、不動産屋さんに、そんな予算で貸してくれるところなんて、ないよ、と言われ。そろそろ諦めたらと、主人にも言われ。そうしたら、たまたまココが出たんです。このお隣の「魯山」さんは、好きなお店で、よく器を見にきていました。なんだか、おそれおおいので、スタートすることが決まってから、ご挨拶に行きました。その時、ご自分が、これまでどうやってきたか、商売の大変さを話してくれました。そのきびしさを肝に銘じて、しかし、それでも私はやるんだと、決心したのです。
ところが、いざ開店となった時、実家の父が倒れて入院。私は東京と郷里の高松を行ったり来たり。それでも、2005年6月11日、オープンと決まり ― ええ、そう、つまり昨年は10周年でした ― しかし、父が急に具合がわるくなり、6月8日に亡くなったんです。そして、6月11日が、お葬式。オープンの日、私は店に出られず、友だちにお願いしました。
開店前、自分のお金なんか、仕入れでほとんど底をついたので、内装も、できるところは家族でやりました。テーブルは、大工さんに板を切ってもらって、脚は買ってきて、つけました。エアコンと照明だけかな、新しく買ったのは。魯山さんに、照明は大切だよ、外から入ってくる空気と光も大切だよ、と教えられました。…… 雰囲気が出るといいなと思って、ペンキに珪藻土を混ぜて塗ってみたり。そうそう。私、色が好きなんですよ。それからあと、小さいもの、グリコのオマケみたいに、ゴチャゴチャしているものも、好きなんですよ。その品物が引き立つように、床はシンプルに、と。お金がかかっているのは、床材。体育館で使う材と同じ、明るくて丈夫なんです。とりあえず、最低限の予算で、ハコをつくりました。