このお店、20年つづいている …… といっても、いやいや、べつにエラくはないですよ。いまの若い方って、お金を貯めて店をだしてみるという、それが目標、夢だという方がいらっしゃる。しばらくやってみて、ヤメてもかまわないと …… そういう方もいらっしゃるみたい。私ですか? 私は食べなきゃいけなかったから、ヤメられませんよ。食べるためですもの。だって、何もできない女が、食べることを考えたら、これしかなかった。そういうこと。ほかのことは、考えませんでした。
私、小さいときから、ヘンなコドモだったんですね。母親が、壊れたブローチをオモチャにって、くれたりしましたよね。それを、大事にもっている。捨てられないタチ。大きくなってから、自分で直して、入院している母のところへ、ちょっとつけて行ったりしてね。「お前、それ、まだもっているの」っていわれましたよ。そんなコドモでした。でも… … ダレかいて、楽に食べさせてくれていたら、お店はやらなかったかもしれない。まあ、いろいろ事情があって、何か始めなきゃいけないと考えて、それで物件を探したんですよ。見つかったのが、ココ。もう、あちこち探しましたよ。私、信仰心はぜんぜんないですけど、思いを叶えてくれるナニかは、ありますよね。もう、ゼッタイこうと思ったら、ゼッタイその必死さが通じると思う。
それで、探していたら、こういうところがあるけど、どう? って。不動産屋さんに、1週間、考えさせてほしいといって、最後にイチかバチかやってみよう、と。お店の改装もしてないんですよ。イヌキだったんです。前は、コドモ服の店って聞きました。開店のころは、商品がパラっとしかなくて、なんか淋しい店だねって、いわれました。最初は、自分のもっているものを、ドンドン出した。なんでも、安く出しちゃいました。それが、よろこんでいただけて、あっという間に、在庫がなくなったの。じゃあ、買い付けに行かなくちゃと、有り金をもって、アメリカへ。