アンティークドールが誕生したのは、フランスです。(その後、ドイツでもつくられますが)。最初は、ファッションドールといわれ、大人の女性のボディーライン、お顔も大人っぽくて、仕立屋さんがマネキンとして使っていたのです。オシャレなドレスを着せられたお人形をショーウィンドウに飾って、こういうドレスをおつくりしますよ、と。いつしかそれを、子どもたちが持って遊ぶようになりました。それに伴って、お人形の体型も、ウェストもあまりくびれていない、ふっくらした子ども体型に変化し、頬もふっくら、お鼻もポッチャリ、細く長い大人の眉も子どもっぽい太い眉毛に変化してきました。
お人形の仕入れは、井の頭でお店をしていた頃は、伯母と年に4、5回、ヨーロッパに行っていました。当時は、結構、お人形専門店もありました。また、蚤の市を日に何カ所も回ったりしました。ある時はフランスの地方の大きな牧場で数百軒のお店が出るアンティークフェアがあると聞き、真冬の外が真っ暗な中を凍えながら、朝一番の電車に乗り込み、2、3時間かけて最寄りの駅につき、そこからタクシーに乗り、ようやくたどり着くと、そこは、恐ろしく広大な牧場で、出店しているお店も数百軒どころか千軒を優に超えるんじゃないかと思えるほど。ここでもし、伯母とはぐれたら、再会できないだろうというくらい。当時はケイタイなんて、ありませんでしたから。で、足が棒になるほど歩き回り、肝心のお人形は一体もなく、古いテディーベアー3体だけでしたね、収穫は。
お人形の買い付けで一番気をつけなければいけないのは、ヘッド(頭)のキズです。ヘッドは焼き物なので、割れやヒビが少しでもあると、極端に価値が下がってしまうんです。日本人の場合、どちらかというと、値段が高くても完璧を求める方が多いんです。なので、私もお顔の気に入った子以外は、キズのある子はあまり扱いません。以前、フランスの人形ディーラーから日本人の目は厳しすぎる。アメリカ人なら多少のキズがあっても古いものだから仕方がないと、喜んで買っていくのにと言われたものです。